Project/Area Number |
22K20613
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0605:Veterinary medical science, animal science, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塚原 洋子 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10958432)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ヤギ / ヒツジ / 内部寄生虫 / 薬耐性 / 国内縦断的調査 / ヤギ・ヒツジ |
Outline of Research at the Start |
国内ではヤギ・ヒツジの飼養頭数が増加している。内部寄生虫症はヤギ・ヒツジ生産で頻発する問題であるが、そのうち捻転胃虫については薬耐性が報告されており、駆虫薬の利用を制限する必要がある。一方、国内ではヤギ・ヒツジの指状糸状虫感染(腰麻痺)を予防するため定期的な駆虫が推奨されている。その背景に指状糸状虫および捻転胃虫の疫学と薬耐性の実態が不明で、理解も得られていない実情がある。そこで本研究では、国内のヤギ・ヒツジの内部寄生虫の蔓延状況と薬耐性についての縦断的な調査を行うとともに、濃縮タンニン含有植物と抗菌活性を持つシロアリ蟻土を利用した非薬物代替品を利用した、新規の内部寄生虫対策の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の成果として、北海道、中部、近畿、四国、沖縄地方11戸のヤギおよびヒツジ生産者を訪問し、アンケート調査ならびに200余頭からのサンプリングを実施した。具体的には、内部寄生虫対策プロジェクトについての情報を全国山羊ネットワーク会報「ヤギの友」に掲載し、協力生産者を募集し、応募のあった農家から、飼養頭数や管理状況において、プロジェクトの目的に合致する農家を選択、2023年3月から9月にかけて、協力農家を訪問し、採材(血液および直腸便)とアンケート調査を実施した。血液は頸静脈から採取しヘマトクリット値を求め、糞はMcMaster法を用いて線虫卵数を計測し、個体ごとの捻転胃虫症の感染程度を間接的に定量した。 アンケート調査の結果より、日本国内において小型反芻家畜の内部寄生虫に対する確立した診断方法および対策方法がないこと、生産者や担当獣医師によって対策方法や使用駆虫剤が異なることが明らかになった。特に、病変のみられる個体に対し、獣医師が確定診断がつけられない(原因がわからない)という事態が起こっていることが明らかになった。さらに、調査対象としたすべての地域において内部寄生虫感染がみられ、特に北海道における超濃厚感染、近畿・四国地方と沖縄県において濃厚感染が見つかり、対策が必要であることが明らかになった。加えて、本プロジェクトを通じて、小型反芻家畜の寄生虫対策講習会を行ったが、同じ地域においても受講者とそうでない人の間に、飼養管理方法による感染度合いの違いがあり、生産者教育の重要性が明らかとなった。 日本国内における小型反芻家畜の内部寄生虫に関する縦断的な調査は、これまでに報告がなく、重要な知見である。本調査結果は、2023年11月に静岡県磐田市で開催された日本山羊研究会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各地域における家畜保健衛生所ならびに生産農家の協力を得て、日本国内5地域(北海道、中部、近畿、中国、沖縄)に渡る243頭からのサンプル採取と調査は実施できたものの、ヤギ生産の盛んな東北・関東地方では予算と日程の都合が合わず、訪問を断念した。しかし、その限られた調査結果から高度な薬耐性捻転胃虫の存在が明らかになり、懸念せざるを得ない状況である。また、昨年度に調査ができなかった地域においては、今年度以降の調査対象にしたいと考えている。さらに、サンプリングを実施した各地域において、「小型反芻家畜の内部寄生虫問題とその対策方法」の講習会を実施し、座学とヤギを利用したデモンストレーションを含む実習を行い、内部寄生虫を問題視している生産者はもちろん、相談や治療を担当する獣医師からも内部寄生虫問題に対する理解が深まったと高い評価を得た。 一方、内部寄生虫の薬耐性検査については、アンケート調査による駆虫時期と調査時の感染状況から推察することができた一方で、in vitro試験に必要なだけの寄生虫が収集できなかった。今後は、超濃厚感染、濃厚感染がみられた地域及び生産者の協力をさらに得て、サンプル量を増やし、国内の薬耐性寄生虫蔓延状況を調査する必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
国内各地域では、ヤギ・ヒツジの取引が県をまたいで行われており、それに伴う内部寄生虫の蔓延状況の把握は、継続して調査する必要がある。特にヤギでは国内の生産者が限られており、その流通と共に薬耐性を持った寄生虫が全国を移動することから、国内の縦断的な実態把握と調査は不可欠である。また、薬耐性内部寄生虫が国内に蔓延するのを防ぐためには、生産者および獣医師に対する啓蒙も非常に重要である。本プロジェクトでは、全国的なサンプリングと聞き取り調査に加え、対策技術の開発として実験室内での薬耐性寄生虫の検出、生産者および獣医師に対する啓蒙、家畜の栄養改善や選抜育種プログラムについての指導、および合成駆虫薬に依存しない自然由来のハーブや抗菌物質を用いた寄生虫コントロール法の開発を通じた包括的な寄生虫対策試験の実施を考えている。次年度は、予算が限られているため、啓蒙の一環として調査結果を臨床獣医学フォーラムおよびヤギ生産者のネットワークを通じて、調査結果を発表することにしている。
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