Project/Area Number |
22KJ0055
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Project/Area Number (Other) |
22J10565 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 優 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 分散様式の性差 / 集団動態 / 遺伝子流動 / 交雑 / ヒグマ / ゲノム / ユーラシア大陸 / 北海道 / 分散の性差 |
Outline of Research at the Start |
雌雄によって出生地に留まるか分散するかが変わる分散様式の性差は、長期にわたって遺伝子流動に大きな影響を与えるため、種内の遺伝的な均一化や分化を明らかにする上で重要な現象であるが、従来の遺伝マーカー分析ではゲノム全体に及ぶ影響を見逃す可能性があった。 本研究では、分散様式の性差が極めて大きいヒグマを対象に、個体群間、個体群内という2つの異なる空間スケールを対象にゲノム解析を行う。得られたゲノム情報から、遺伝子流動の規模と、分散様式の性差を含めた遺伝子流動に影響を与える要因との関連性の2点を明らかにすることで、分散様式の性差が、生物の遺伝的多様性や集団形成にどのような影響を及ぼすのかを評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オスに偏った分散をするヒグマを対象とした集団解析により、分散様式の性差が生物の集団形成に及ぼす影響を評価することである。北海道の個体群内、アジアの個体群間という2つの異なる関係性に着目し、ゲノムデータと分布情報を用いた解析により、遺伝子流動の規模と、遺伝子流動に影響を与える環境要因を特定することで、分散様式の性差の影響を明らかにすることを試みた。 まず北海道の個体群に着目した研究では、北海道のヒグマ49個体を対象にddRAD-seq解析を実施し、得られた遺伝情報をもとに集団解析および環境要因との関連性を検証した結果、大陸から北海道への移住および気候変動に伴う分布域縮小後の拡大において、オスの分散が個体群の形成に多大な寄与をしていることが推定された。この結果は現在論文としてまとめ、投稿準備中である。 次にアジアの個体群に着目した研究では、アジアの地域個体群由来のヒグマ9個体の全ゲノム解析を実施し、先行研究で報告されている他地域のヒグマや近縁種のデータも併せて集団解析を実施した。ヒグマのゲノム上にはホッキョクグマからの遺伝子流入の痕跡が残ることが知られているが、本研究でアジアの地域個体群間で遺伝子流入の度合いが異なること、その違いが過去およそ2万年以内におけるオスを中心とする分散の影響の度合いによって説明できる可能性が示唆された。 以上2つの研究により、分散様式の性差は、移住および拡大時の集団動態に大きな影響を与え、分散様式の性差が長期にわたって続くことによって、形成される個体群の遺伝的特徴に深く関わったと考えられる。分散様式の性差はヒグマ以外にもさまざまな分類群で普遍的に見られる現象であり、本研究の知見はヒグマ以外の生物の個体群形成の過程を明らかにする上でも重要であるだろう。
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