植物におけるエピジェネティクス関連酵素のスクリーニング法の確立
Project/Area Number |
22KJ0120
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Project/Area Number (Other) |
22J21071 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 38060:Applied molecular and cellular biology-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
沖宗 慶一 北海道大学, 国際食資源学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ヌクレオソーム / クロマチン / コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法 / エピジェネティクス / コムギ胚芽無細胞タンパク質合成 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、エピジェネティクスの生化学的な分子機構解明を目的に、エピジェネティクスに関連するヒストン修飾酵素のスクリーニング法を確立する。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成を利用した独自の手法によって、植物(シロイヌナズナ)の染色体を構成するDNA-ヒストンタンパク質複合体:ヌクレオソームの再構築・精製法を確立する。そして再構築ヌクレオソームに対し、単一あるいは複数のヒストン修飾酵素を作用、LC-MS/MSを用いた定量プロテオミクス解析を行うことでエピジェネティクス関連酵素の作用機序を生化学的に解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
染色体を構成するクロマチン及びその基本構造であるヌクレオソームを試験管内で再構成する当研究室独自の手法を、モデル植物であるシロイヌナズナのヌクレオソーム再構成について適用すること、さらに再構成ヌクレオソームを基質として利用し、ヒトや酵母に比べ生化学的知見の少ない植物のエピジェネティクスに関連するヒストン修飾酵素の機能を解明することを目的に研究を実施した。 令和5年度は、シロイヌナズナのヌクレオソーム再構成について、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法を利用した当研究室独自の再構成法によって通常のコアヒストンに加え、H2A.X、H2A.W、H2A.Z、H3.3、CENH3といったヒストンバリアントを含むヌクレオソームが形成されることを確認し、Scientific Reports誌に論文を投稿、採択された。さらにヌクレオソームとは異なるDNAとヒストンH3H4からなる複合体の試験管内再構成を実施しており、特許を出願した(特願2023-188455)。 エピジェネティクスに関連するヒストン修飾酵素の機能解明については、まず目的のヒストンタンパク質N末端領域のペプチド断片がLC-MS/MSによるプロテオミクス解析によって検出されることを確認した。ヒストンバリアントH2A.Zのプロテオミクスデータについては、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成によるH2A.Zの発現を証明するために前記投稿論文に利用した。 またヌクレオソームの構造解析を目的に、マグネシウム沈殿、スクロースと架橋剤の密度勾配を利用した遠心法GraFix法の組み合わせによって、再構成ヌクレオソームの化学架橋と精製に成功し、クライオ電子顕微鏡単粒子解析が可能となった。 以上が令和5年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナのヒストンバリアントを含むヌクレオソームが、当研究室独自のコムギ胚芽無細胞タンパク質合成法を利用したヌクレオソーム再構成法によって形成されることを示し、論文投稿に至ったことは、進捗状況が順調と言える理由の一つである。また、この成果は本再構成法による種々のヌクレオソーム基質の調整が可能であることを示し、今後これらの基質を利用したヒストン修飾酵素の機能解明への研究に繋がる順調な進展であると考えている。 さらに構造解析を目的とした精製ヌクレオソームの調整に成功したことも順調さの理由である。令和5年度はヌクレオソームを構成する4種のヒストンmRNAの量と比の最適化、化学架橋と精製を組み合わせたGraFix法の利用によって、クライオ電子顕微鏡単粒子解析に十分な量の精製ヌクレオソームの調整に至った。この成果は、当研究室独自の再構成法で調整したヌクレオソーム構造と既存の方法で再構成されたものとの相違を明らかにする構造解析の実施に非常に重要な意義を持つ進捗と捉えており、令和6年4月からの構造解析の開始に繋がっている。 一方でエピジェネティクスに関わるヒストン修飾酵素の機能解析については、進捗状況はやや遅れている。その理由は、前記した精製ヌクレオソームの調整を優先的に実施したからである。再構成ヌクレオソームの基質利用の前に、既存法で再構成したヌクレオソームとの相違を構造解析によって明らかにすべきだと考え、そちらを優先した。再構成法が独自ゆえに精製法の確立に時間を要した結果、進捗に遅れが生じた。 以上のように種々のヌクレオソーム再構成、構造解析へ向けた精製については進捗状況が順調であること、エピジェネティクス関連酵素の機能解析についてはやや遅れていることを総合的に判断し、おおむね順調な進捗状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度において、まず再構成ヌクレオソームの立体構造をクライオ電子顕微鏡単粒子解析によって決定する。その目的は、当研究室独自の再構成法と既存の再構成法で組み立てられたヌクレオソームの構造の相違を明らかにすることである。構造が一致した場合、ヌクレオソームを基質にエピジェネティクスに関連するヒストン修飾酵素の機能解明へ向けた研究を実施する。構造が異なる場合、その要因の同定を行う。具体的には、再構成法のベースとなるコムギ胚芽抽出物に対して、ヌクレオソームの形成・構造に影響する因子の同定を試みる。ヌクレオソーム再構成産物に対し、ヒストン抗体を利用した共免疫沈降ならびにプロテオミクス解析を実施することで因子を同定する。また研究実績の概要に記載したDNA-ヒストンH3H4複合体についても、ヌクレオソームと同様にクライオ電子顕微鏡単粒子解析によって立体構造を決定する。これら立体構造解析の結果を元に論文の執筆ならびに投稿を計画している。 エピジェネティクスに関連するヒストン修飾酵素の機能解明については、まず再構成ヌクレオソームに対し既報のヒストン修飾反応を実施、LC-MS/MSによる定性プロテオミクス解析あるいはウェスタンブロッティングによって、ヌクレオソームが基質として機能することを確認する。その後、安定同位体標識TMT(Tandem Mass Tag)試薬を利用した定量プロテオミクス解析を実施する。今後、実施する複数のヒストン修飾酵素を介した多段階的なヒストン修飾反応の定量解析のための基盤技術の構築を目指している。併せてクライオ電子顕微鏡や高速原子間力顕微鏡を利用し、ヒストン修飾にかかるヌクレオソーム構造変化についての評価も検討する。 以上が令和6年度の研究推進方策であり、得られた成果をもとに日本分子生物学会での学会発表や論文投稿を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)