Project/Area Number |
22KJ0157
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Project/Area Number (Other) |
21J00153 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平居 悠 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 衛星銀河 / 矮小銀河 / 天の川銀河 / 星形成史 / 化学進化 / 銀河形成 / 銀河考古学 / 数値シミュレーション / 銀河系 / 金属欠乏星 / 元素合成 / rプロセス / 銀河進化 / 星団形成 / 星形成 / ダークマター / 元素組成 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、天の川銀河とその周囲に存在する矮小銀河の進化史を理論、観測の両面から明らかにする。特に、矮小銀河の進化史、天の川銀河への矮小銀河降着史、天の川銀河円盤の構造に着目する。まず、矮小銀河の物質分布、星形成史と元素組成の関係を示す。続いて、観測とシミュレーションデータを比較し、100億年以上前の天の川銀河形成史を明らかにする。さらに、最近の矮小銀河と天の川銀河との相互作用で生じる構造を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、天の川銀河衛星銀河の化学動力学進化史の研究に取り組んだ。天の川銀河衛星銀河の元素組成には、それぞれの銀河の星形成史が反映されている。古い星の年齢を決定することは難しく、衛星銀河の星形成史は精度良く測られていない。2025年から観測開始を計画しているすばる望遠鏡超広視野多天体分光器(PFS)では、衛星銀河の星の元素組成をこれまでの10倍以上の星について観測できる。こうした観測から正しく星形成史を再構築するには、衛星銀河の星形成史と元素分布の関係を理解する必要がある。そこで本研究では、天の川銀河形成シミュレーションを実施し、形成された衛星銀河の星形成史、金属量分布、α元素(Mg, Ca, Si)分布を解析した。その結果、これらの銀河は天の川銀河に降着する前に星形成を終えており、超新星爆発の加熱効果により、数億年程度の間隔で増減を繰り返すことが明らかになった。同一の星形成イベントで形成された星々は、似た金属量分布、α元素分布を持っていた。α元素と鉄の比([α/Fe])と金属量([Fe/H])の関係をプロットすると、それぞれの星形成イベントに対応する複数の似た[α/Fe]と[Fe/H]を持つ星のグループが見られた。さらに、恒星進化モデルをシミュレーションした衛星銀河の星に適用し、それらの年齢と金属量から個々の星の等級を計算した。これに基づき、すばる望遠鏡超広視野多天体分光器 (PFS)の擬似観測を実施した。その結果、すばる望遠鏡PFSで衛星銀河に属する1000個以上の星を観測することにより、似た[α/Fe]と[Fe/H]を持つ星のグループが検出できる可能性が示された。これは、すばる望遠鏡PFSの観測で、これまで検出できなかった100億年以上前に数億年間隔で現れる星形成イベントの痕跡を星の元素組成から辿れるようになることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね計画通りに進展した。主に行った天の川銀河衛星銀河の研究では、高分解能な銀河形成シミュレーションを実施し、形成した矮小銀河についてすばる望遠鏡PFSの擬似観測を行った。これにより、すばる望遠鏡PFSをはじめとする次期大型分光観測サーベイにより、これまで分解できなかった宇宙初期に数億年程度の間隔で起きた星形成の痕跡を辿れるようになることが示唆された。本研究結果を用いて、2025年から開始されるすばる望遠鏡PFS戦略枠での観測で得られた結果を解釈することで、観測、理論の両面から天の川銀河衛星銀河の化学動力学進化史の理解を深化させることができる。本成果に関する論文は2024年度中に投稿する予定である。また、本成果に関連して、3件の招待講演を含む8件の口頭発表を行った。この他、今年度は、9件の共著論文を出版できた。特に、Hayashi, Hirai et al. (2023), ApJ, 953, 185では、天の川銀河衛星銀河のダークマター分布を導出した。Eridanus II, Segue I, Willman 1矮小銀河では、ダークマター密度が銀河中心ほど高くなるカスプ型のダークマター分布をしている可能性が高いことを示した。現在、本研究で実施した銀河形成シミュレーションで形成した衛星銀河のダークマター分布の解析に着手している。さらに、Hirashima et al. (2023), MNRAS, 526, 4054では、銀河形成シミュレーション高速化のための深層学習モデルを構築した。この成果で構築したモデルは本研究で今後実施するシミュレーションで用いる予定である。一方、本年度実施した異なる初期条件からの天の川銀河形成シミュレーションのデータの解析はまだ未着手で、来年度以降の課題である。以上から、本年度の研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、最近の天の川銀河への矮小銀河降着、天の川銀河との相互作用の影響を明らかにする。本研究では、天の川銀河形成シミュレーションとすばる望遠鏡PFSのデータを用い、銀河円盤に垂直な方向の構造を解析し、矮小銀河が天の川銀河円盤近くを通過した際に生じる構造の変化を明らかにする。天の川銀河形成シミュレーションを用いて、恒星ストリームの化学動力学的構造と恒星ストリームの元となった矮小銀河の進化史、降着したタイミングの関係を示す。続いて、天の川銀河円盤で形成され、後にハローに弾き出された星の化学動力学的性質を明らかにする。矮小銀河由来の星についても同様の解析を行い、r-process alliance (RPA)及びすばる望遠鏡PFSのデータからハロー星がいつ・どこで形成されたのかを辿れるようにする。続いて2025年度には、天の川銀河ハロー、円盤、矮小銀河形成のシナリオを構築する。2024年度までに実施したRPAおよびすばる望遠鏡PFSの観測と異なる初期条件から計算した天の川銀河形成シミュレーションを比較することにより、合体史が天の川銀河の化学動力学構造に与える影響を明らかにする。さらに、2021年度に構築したモデルを用いて個々の恒星まで分解した銀河形成シミュレーションを実施する。これにより、星質量1000太陽質量以下の矮小銀河も分解できるようになり、宇宙最初期のミニハロー形成から現在までの銀河形成を辿ることができる。RPAとすばる望遠鏡PFSのデータを用いることで、宇宙最初期の天の川銀河形成の痕跡を探り、初代銀河誕生時から現在までの天の川銀河形成を再構築する。
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