海水温変動が沿岸生態系のレジームシフトを発生させる原理の力学系理論に基づく解明
Project/Area Number |
22KJ0243
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Project/Area Number (Other) |
22J11460 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 63010:Environmental dynamic analysis-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
行平 大樹 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 生態系 / 安定性 / レジームシフト / 種間相互作用 / 環境変動 / 時系列解析 / ベイズ推定 / 沿岸生態系 / 気候変動 |
Outline of Research at the Start |
生態系のレジームシフトは環境変動による力学系の安定性の変化とそれに伴うアトラクターの遷移として理論的に理解されてきた。しかし、自然生態系において生態系の安定性を定量し、アトラクターの遷移を検出した実証研究はほとんどない。本研究はレジームシフトについての力学系理論に基づく実証的理解を前進させることを目的とし、黒潮大蛇行に伴う海水温分布の変動がレジームシフトを引き起こす可能性に注目する。具体的には、非線形時系列解析を用いて、黒潮大蛇行前後の時系列データから沿岸生態系の安定性を定量し、さらにアトラクターの遷移を検出することで、海水温変動がレジームシフトを発生させる原理を力学系理論に基づいて解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、力学系理論に基づく時系列解析の手法を利用することで、沿岸生態系における生物の存在量の変化を記述した時系列データから、海水温変動によってレジームシフトが発生する力学的メカニズムを実証的に理解することを目的とした。研究の成果として、最終年度に行った研究を通じて、レジームシフト発生時の安定性の変化を定量するための方法論に関する重要な成果が得られた。 具体的には、安定性を定量するために必要な生態系内の種間相互作用構造を表す行列 (ヤコビ行列) を推定するための新たな手法を開発した。提案手法はガウス過程回帰というベイズ機械学習の手法を応用したものであり、既存の手法と比較して2つの大きな利点を有することが人工データなどを用いた性能比較により明らかとなった。第1に、確率的なノイズが含まれたデータに対して、既存の手法よりも高精度のヤコビ行列の推定が可能である。また第2に、既存の手法が点推定しかできないのに対して、提案手法はヤコビ行列成分の区間推定が可能であり、推定の不確実性を事後分布によって評価することができる。それゆえ、提案手法は既存の手法より信頼性の高いヤコビ行列の推定を実現した。 生態系のレジームシフトついての力学系理論に基づく実証的理解が不十分であった背景の1つとして、安定性などの生態系の力学的性質をデータから定量するために利用可能な手法がごく最近まで限られていたことが挙げられる。本研究が提案した手法は、レジームシフトについての実証的理解を深めるための重要な基盤となる成果だと考えられる。加えて、種間相互作用構造の情報は、生態系に関する最も重要な情報として多くの実証研究において必要とされてきたことから、本研究の成果は、レジームシフトの研究に限らず種間相互作用の情報を利用する生態学の実証研究全般に対しても意義を有すると予想される。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)