Project/Area Number |
22KJ0287
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Project/Area Number (Other) |
22J20231 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大智 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ラマンイメージング / 深層学習 / 細胞内温度 / CARS顕微鏡 / Deep learning |
Outline of Research at the Start |
生細胞のラマンスペクトルは細胞の物理的・生理的状態などによって変化することが知られているが,これらの変化を解析し細胞の状態を評価する手法は十分に確立されていない.そこで本研究ではDeep learningによって細胞のラマンイメージを自動的に解析する人工知能を開発する.これにより細胞内温度を測定する技術,多数の細胞内小器官を無染色で可視化する技術,細胞周期を判定する技術などを確立し,生細胞の様々な状態を簡便に,非標識かつ非破壊的に解析できる新たな手法として提案する.さらに,これら技術の応用として細胞内温度と種々の疾患との関連や,様々な細胞内小器官における低分子医薬の動態などの解明を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は,主に「ラマンイメージングとDeep learningによる単一細胞内の温度測定手法の開発」と「CARS顕微鏡による細胞のラマンイメージ測定手法の確立」を進めた. 細胞内温度の測定については,2022年度までの結果で細胞のラマンイメージにおいて1ピクセルを構成するラマンスペクトルから約1.3℃の誤差で温度を推定できる深層学習モデルを開発できていた.2023年度には統計学的手法の一種である特異値分解を用いることで,スペクトルデータのノイズを軽減するなどの解析により,深層学習モデルに入力するデータの品質を改善した.これにより1ピクセル当たりの誤差は約0.4℃まで向上し,単一細胞内の特定の領域(核や細胞質)における平均温度については,誤差約0.2℃で精度よく測定できた. また,トコンドリアの電子伝達系に作用する薬剤であるFCCPを添加した細胞のラマンイメージを取得した.深層学習モデルを用いて細胞内温度を推定すると,FCCPで処理した細胞は,細胞質の温度がコントロールに比べて有意に上昇していた.この結果は,本手法により薬剤添加に伴う細胞内温度の変化を検出できることを示している. CARS顕微鏡による細胞のラマンイメージ測定については,スペクトルから非共鳴バックグランド(NRB)を除去し,正しい形状のスペクトルを得る解析手法を確立した.2022年度までの結果では,単一細胞のCARSイメージを取得するシステムの開発に成功していた.しかしCARS顕微鏡によって得られるCARSスペクトルは非共鳴バックグラウンド(NRB)による影響で物質の量的情報などの詳細な解析を行うことが困難である.2023年度には,CARSスペクトルにおいてC-H伸縮振動バンドやO-H伸縮振動バンドを含む高波数領域にKramers-Kronig変換を適用することで,NRBを除去する手法を確立できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内温度の測定については,2023年度の研究で測定精度を大きく向上することができた.2022年度に確立した深層学習によるラマンスペクトルの解析では,温度の測定精度は誤差が1ピクセル当たり約1.3℃であったが,データの前処理方法などを改善することで誤差約0.4℃を実現できた.様々な生体内反応による細胞内の温度変化を検出することを目的とするこの手法においては,今回の精度向上は大きな進展であると考えられる.また,FCCPを添加した細胞においては,細胞内温度が有意に上昇する結果が得られていることから,今回の測定手法により実際に細胞応答による温度上昇を検出できることが示唆された. CARS顕微鏡による細胞のラマンイメージ測定については,CARSスペクトルから非共鳴バックグラウンド(NRB)を除去してラマンスペクトルを復元する手法を確立できた.これにより,自発ラマン散乱のスペクトルと同様に解析が可能なラマンスペクトルが得られる.したがって,ラマンスペクトルに対する従来の解析手法を適用することで,CARS顕微鏡を用いた細胞の分析について,さらなる発展が期待できる. 以上の実績は概して当初の研究計画通りであり,したがって本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内温度の測定について,これまでにラマンイメージ中の1ピクセル(約1μm×1μm)という微小領域において約0.4℃の測定誤差を実現でき,また,FCCPを用いた実験で細胞内の温度上昇を検出することができた.これは,本手法における最終的な目標である細胞内部における温度分布の可視化,すなわち温度分布イメージングを実現するために十分な測定精度を実現できたと考えている.今後は,本手法によるFCCPによる細胞内温度上昇の検出について再現性の検証をしつつ,同サンプルにおいて上昇した温度分布のイメージ化を試み,この成果により査読付き雑誌論文への投稿を目指す. CARS顕微鏡については,ラマンスペクトルの解析において大きな問題となる非共鳴バックグラウンドを除去する手法を確立できた.CARS顕微鏡は本研究の目的の一つである細胞内小器官のラベルフリーイメージングに用いる予定であった.これを実現するための教師データについては,細胞のCARSイメージと各細胞内小器官の蛍光染色イメージを同時測定することで入手することを計画している.そのため,今後はCARS顕微鏡に改良を施し,CARSイメージと蛍光イメージの同時測定を可能とすることを目指す.
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