Project/Area Number |
22KJ0377
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Project/Area Number (Other) |
22J00270 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
増田 亘作 筑波大学, 医学医療系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 概日時計 / 老化 / 位相応答 / 時空間パターン |
Outline of Research at the Start |
マウスの概日時計における老化細胞を起点とした時空間ダイナミクスを実験と理論の両面から明らかにする。まず、細胞・組織培養により老化細胞の概日リズムの基礎特性を定量的に評価し、少数の老化細胞が組織全体へ影響を及ぼす過程をシミュレーションにより予測する。これらの結果をもとに、個体レベルでの老化に起因する概日時計の時空間ダイナミクスを予測し、それがマウスの行動や老化の進行に与える影響を評価する。以上から、老化と概日リズム障害との関係性の解明を目指すとともに、それらの改善方法の考案を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度において、まず、概日時計の乱れが老化を引き起こすメカニズムを理解するために、概日時計・細胞周期・酸化還元リズムに関する数理モデルの構築を行った。このモデルでは、先行研究に基づき、上記の三つの生物リズムが独立かつ相互に作用すると仮定し、細胞周期あるいは概日時計の位相と酸化還元リズムに伴うH2O2濃度のリズムのピーク時刻との関係から細胞へのダメージを評価する。モデルの解析の結果から、それぞれのリズム間のカップリングによりH2O2のピーク時刻がH2O2への感受性が高い時刻を避けるように現れることが分かった。この結果から、概日リズムの乱れが各リズムの適切な位相関係を乱し、細胞内の酸化ストレスが高まることで、老化が加速することが示唆された。また、これらのカップリングは強すぎる場合にはかえって酸化ストレスを高めることから、これらのリズムの独立性と同調性には適切なバランスが存在することが示唆された。 次に、老化や慢性的なストレスによって、体内の糖質グルココルチコイドの濃度が上昇することが知られており、これらは概日時計の乱れを引き起こす原因になりうると考えられる。そこで、培地中の同調因子に対する追加の刺激への応答性の変化を詳細に解析することにより、この変化のモデル化を行った。モデルでは、培地中の同調因子と追加の同調因子を二段階の刺激ととらえ、最終的な濃度への応答から一段階目の刺激への応答を差し引くことにより、二段階目の刺激への応答を予測する。このモデルにより、マウスの培養細胞や組織培養を用いて、糖質グルココルチコイドの一種のデキサメタゾンについて、培地中の濃度に対する追加の刺激への応答の変化がモデルにより予測できることが確かめられた。本成果は体内の同調因子の濃度に基づいた老化に伴う概日時計の乱れの予測やその治療につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画としては、数理モデルを通して、老化細胞を起点とした概日時計の時空間的なパターンの形成を理解することを目的とした。一方、本年度の研究の成果として、よりミクロなレベルの概日リズムの乱れが細胞老化につながるメカニズムが数理モデルを用いた解析で示されるとともに、細胞集団のネットワークもそれらの調整に重要であることが示された。また、シミュレーションでは細胞老化がこれらのリズムの関係に影響を与えることも示唆された。そのため、これらの成果はモデルを通した概日時計と細胞老化の間の時空間的な相互作用への理解を進展させることができたと評価できる。 加えて、実験を通して老化に伴い概日時計の乱れが生じるメカニズムの一端をモデル化した。この成果は、老化に伴う概日リズムの動的な変調を予測することにつながるとともに、老化が生体内の概日リズムネットワークに与える影響にも示唆を与える成果であるといえる。 以上の結果を総合して、当該年度の進捗状況を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究で、実験と数理解析を通して老化が概日リズムに与える影響の評価とモデル化を進めてきた。これにより、老化に起因する概日時計の時間的、ネットワーク的な変化に対する理解が深められた。一方、老化に伴う概日リズムの空間的なパターンの変化については十分な調査が行われていない。そこで、今後の研究の推進方策としては、実験とシミュレーションを用いて、概日リズムの2次元、3次元的なパターン形成と老化との関係性を調査する。実験においては、培養細胞や組織スライスを用いて、2次元的な概日リズムのパターンを評価する。p16遺伝子を細胞老化のマーカーとし、細胞集団内の老化細胞の占有度と概日リズムのパターンの関係を明らかにする。シミュレーションでは、2次元、3次元的な概日リズムのパターンを評価する。実験データに基づいて概日リズムが変調した老化細胞を導入することで、老化細胞が空間的な概日リズムのパターンに与える影響を評価する。そして、ここまでの研究で構築した細胞内の概日リズムの同調モデルを導入することで、空間的なパターンの変調が細胞の老化に与える影響を評価する。
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