Project/Area Number |
22KJ0378
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Project/Area Number (Other) |
22J00433 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
香川 理 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 共生 / 共進化 / 宿主特異性 / バイオフィルム / 軟体動物 / 付着緑藻 / 潮間帯 / 腹足類 / 緑藻類 / 微生物群集 |
Outline of Research at the Start |
共生-宿主の関係において、共生者が従来とは異なる宿主への利用を変化させる宿主シフトは、新たな共生系を生み出す重要な一歩である。しかし、その発端となる仕組みは多くの共生系でわかっていない。そこで本研究では、貝類と貝殻特異的な付着藻類の共生系を対象にして、宿主シフトのメカニズムを明らかにする。とくに付着藻類の遊走子は、基質のバイオフィルムを認識して定着する。そこで付着藻類の遊泳細胞と貝殻バイオフィルムの関係性を細胞生物学的に調べる。さらに、そのような細胞レベルの付着メカニズムの解明に加え、共生系確立における進化的背景を、分子遺伝学的手法を用いて解き明かす。
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Outline of Annual Research Achievements |
共生-宿主の関係において、共生者が従来とは異なる宿主への利用を変化させる宿主シフトは、新たな共生系を進化的に創出する重要なプロセスである。しかしながら、その発端となる仕組みは、多くの共生系でわかっていない。そこで、本研究では、貝類と貝殻特異的付着藻類の共生系を対象にして、宿主シフトのメカニズムを明らかにすることを目的とした。付着藻類は、その生活環のなかで遊泳細胞によって分散し、着底、生育する。また先行研究では、着底基質のバイオフィルムが遊走細胞の遊泳を調節し、着底を促すことが知られている。そこで付着藻類の遊走細胞と貝殻バイオフィルムの関係性を調べることで、宿主シフトプロセスの理解を試みた。具体的には、系統、集団ゲノミクスから貝殻特異的付着藻類の宿主特異性と系統的多様化を調べ、メタバーコーディングによる貝殻微生物群集の網羅的把握を行った。また、貝殻付着藻類の培養株を作成し、遊泳細胞による宿主選択実験を行った。系統、集団ゲノミクスの結果、貝殻付着藻類が、貝類宿主に特異的に付着すること、宿主シフトによって種分化が生じたこと、宿主シフトの初期に遺伝子流動が生じる段階があることを明らかにし、貝殻付着藻類が宿主シフトを介して系統的に多様化することを明らかにした。さらに、メタバーコーディングの結果は、貝殻微生物群集が基盤となる貝類種によって異なることを示した。一方で、遊泳細胞による宿主選択実験の結果は、予想に反して、遊泳細胞が貝殻バイオフィルムではなく、宿主粘液に誘引される可能性を示唆した。しかしながら、藻体の培養と細胞走化性実験の手法的な問題から、誘引を示す定量データの取得には現在、至っていない。これについては更なる実験と定量データの取得が課題としてあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、研究を進めてきた。系統、集団ゲノミクスの結果は、貝殻付着藻類が宿主特異性を有し、宿主シフト種分化を経験したことを示した。また貝殻微生物群集の網羅的調査は、宿主貝類種ごとに、異なる貝殻微生物群集が存在する可能性を示した。一方で、培養株による遊泳細胞の走化性実験は、遊泳細胞が貝殻バイオフィルムではなく、宿主粘液に誘引される可能性を示した。この結果は当初は予期していなかったが、宿主認識機構の進化という点で、新たな研究の方向性を見出している。以上から、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
貝殻付着藻類の遊泳細胞による宿主選択実験では、予想に反して、遊泳細胞が宿主粘液に誘引されるという可能性を示した。このような報告は大型緑藻類で現在までに報告がなく興味深い結果である。しかしながら、現在までに、その培養株の維持や細胞走化性実験の手法的な問題から、定量データの取得には至っていない。これは重要な課題であり、今後、更なる実験と解析を進める予定である。また、現在は、1種類の貝殻付着藻類と宿主のみを対象としており、他の貝殻付着藻類についてはまだ研究が進んでいない。そのため、宿主認知能と、宿主シフトや系統的多様化との関連性を明らかにするために、複数の種に本実験を拡大する予定である。
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