Project/Area Number |
22KJ0619
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Project/Area Number (Other) |
21J21297 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 祐児 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | 貧困者の救済 / 子どもの貧困 / 社会的投資 / 貧困 / サーベイ実験 |
Outline of Research at the Start |
近年、貧困の議論における自己責任論の存在感が増すとともに、その解体・超克が目指されている。しかし自己責任論と同様のレトリックは洋の東西を問わず、古くから観察されている。こうした経緯からわかるように、貧困研究にとって重要なのは貧困者の救済を否定する言説の総体の解体・超克である。 本研究は日本と、貧困政策をリードしてきたイギリスの両国における貧困者の救済に関する論争史を描くことを通して、貧困者の救済を否定する言説の総体を導き出すことを目的として定める。このような本研究は、貧困研究が取り組むべき課題を刷新するのみならず、貧困の低減に向けた社会保障政策を構想することにも資するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、貧困者の救済における論争や意識の分析を通じ、貧困者の救済を否定する言説や意識の特徴を明らかにすることであった。研究期間を通じて行った研究内容は以下の2つに整理できる。 第1に、貧困者の救済を否定する言説のうち、近年の代表的な自己責任論と、自己責任論への対抗の役割が期待された子どもの貧困論との間の関係を分析した。主な知見は以下の2つである。まず、子どもの貧困論と大人の貧困における自己責任論の両方について、それらの推移を分析した。その結果、子どもの貧困論が大人の貧困における自己責任論の抑制に接続していた可能性は否定できないものの、その程度は限定的であったと考えられるという知見が得られた。次に、子どもの貧困言説と大人の貧困言説を繋ぎ合わせるレトリックを分析した。結果として、子どもの貧困と結びつける対象としての「大人」の範囲は、子どもの親かせいぜい親世代のみに限定されていることが明らかになった。 第2に、ある貧困者が救済に値すると判断されるかどうかについて、貧困者の状況をランダムに変化させるサーベイ実験を活用した検討を行った。貧困者の状況として特に着目したのが子どもの有無である。貧困者に子どもがいることは、社会的投資の観点からすれば、行政による支援の対象とみなすことができる一方で、家族主義の観点からすれば、貧困者本人の自助の対象とみなされることになる。分析の結果、貧困者に成績が優秀な子どもがいること行政による救済責任を強化する効果がある一方、子どもの成績や性別を問わず、貧困者に子どもがいることは貧困者への帰責を強化する効果がみられた。従来の社会的投資と家族主義に関する議論では、両者は両立し得ないと考えられてきたが、本研究の知見はそれが両立しうることを示すものであった。 本研究助成によって得られた主な成果は以上のとおりであり、いずれの成果も査読あり論文として掲載されている。
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