Project/Area Number |
22KJ0729
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Project/Area Number (Other) |
22J00473 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉元 菜々子 東京大学, 大学院情報学環, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ネパール / グルン / 先住民運動 / 宗教 / 知識 / 翻訳 |
Outline of Research at the Start |
ネパールのグルンと呼ばれる人びとの間では、近年、民族運動を背景とした土着の宗教的知識の再評価の動きがみられる。特徴的なのは、知識人や宗教職能者らがグルンの儀礼的実践や宗教的世界観のもつ意味や価値を、グローバルな言説や科学的知識と結びつけて語り始めているという点である。本研究は、土着の宗教的知識がグローバルな言説や科学的知識を通して変換・翻訳されることで再び民族の知識として顕在化するという一連の実践を「再帰的翻訳」と概念化し、今日のグルン社会における知識生成のありようを探求するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
ネパールのグルンと呼ばれる人びとの間では、近年、民族運動を背景とした土着の宗教的知識の再評価の動きがみられる。特徴的なのは、知識人や宗教職能者らがグルンの儀礼的実践や宗教的世界観のもつ意味や価値を、グローバルな言説や科学的知識と結びつけて語り始めているという点である。本研究は、土着の宗教的知識がグローバルな言説や科学的知識を通して変換・翻訳されることで再び民族の知識として顕在化するという一連の実践を「再帰的翻訳」と概念化し、今日のグルン社会における知識生成のありようを探求するものである。 本研究計画の二年目にあたる2023年度は、インターネットを通じたデータ収集と文献研究を主とした研究活動を実施した。具体的には、グルンの民族協会の中でも特に宗教文化の保護や拡大に注力している組織の諸活動についての情報収集を行った。ネパールでは1990年の民主化以降、諸民族が自らの言語や文化を保護し、政治や教育における権利を主張する民族運動を展開してきた。本研究では、中でもグルンの宗教文化の保護や普及を目指して設立された組織に焦点を当てており、ネパール国内や海外で設立された支部においてどのような活動が行われ、そこでグルンの宗教についていかに語られているのかについてのデータ収集を行っている。 2023年度の調査研究の中で新たに確認できた動向として、演劇を通じたグルンの宗教についての布教活動がある。そこでは、グルンの宗教を次世代に継承することの重要性が説かれているほか、宗教職能者によって実際の儀礼が時間を割いて披露されており、グルンの宗教儀礼になじみの薄い若年層をターゲットに視覚的に訴える試みがなされている。今後は現地調査を含む研究活動を行い、これまで収集したデータと合わせて分析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、インターネットを通じたデータ収集と文献研究を主とした研究活動を実施した。文献研究ではネパールを含む世界各地の民族運動、および先住民運動についての文献を渉猟し、研究動向について確認するとともに、特に宗教をめぐる活動の特徴についての分析と本研究における調査対象との比較分析を行った。また昨年度に引き続き、科学人類学や文化の翻訳論についての文献研究を行った。インターネットを通じた調査研究では、グルンの民族協会の活動についての情報を収集し、活動家や宗教職能者による宗教についての語りや演劇の内容についてまとめ、分析を行った。2023年度は現地調査を見送ることとなったが、文献やインターネットを通じて上述の研究を進めることができ、現時点で調査研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、2024年度以降は文献研究とフィールドワークを通じて、主に以下の二点について研究を進めていく。 ①グルンの宗教伝統をめぐる活動と知識の翻訳に関する調査、およびそのネパール国内外の状況に関する比較研究。 グルンの人びとによる民族運動は、ネパール国内のみならず海外においても展開されてきた。活動の方針はおおよそ一致しているものの、国内外で宗教伝統の保護を訴える対象は大きく異なる。すなわち、出身地域によるまとまりと伝統宗教に基づく儀礼実践がある程度維持されているネパール国内のグルンを対象とするか、出身も様々で伝統宗教とのかかわりも薄い海外在住のグルンを対象とするかでは、その活動内容は必然的に違うものとなる。そこで本研究においては、このような対象や状況の違いに応じて宗教的な知識がいかに翻訳・伝達されているのかを明らかにする。 ②非専門家による宗教的知識の受容と知識生成に関する民族誌的研究。 具体的な現場において活動家や宗教職能者らが非専門家である一般のグルン住民に対して宗教的世界観や儀礼の意味をどのように翻訳しているのかを、どのような人やモノがアクターとして媒介しているのか、専門家と非専門家の間でどのような相互行為が行われ、非専門家の視点や関心がいかに取り込まれているのかに着目しつつ明らかにする。また、専門家によって言語化され、翻訳された宗教的知識を非専門家である一般のグルンの人びとがいかに受け止め解釈しているのか、それをいかに発信しているのかを知識生成の一過程として明らかにする。
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