Project/Area Number |
22KJ0761
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Project/Area Number (Other) |
22J01478 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 05010:Legal theory and history-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下 慎梧 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 紛争解決 / 息訟 / 調停 / 地方自治 / 清朝 / 中華民国 / 息訟公所 / 息訟所 / 郷紳 / 紳士 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、清代後期~中華民国期という、伝統的な国家が・社会が近代的なそれへと移行してゆく時代の中国における、国家ではない民間による紛争解決に着目し、その仕組みと変化・法制度上の意義・人々の法意識を考察するものである。 これにより、社会の中における紛争解決のあり方を、法制の基層部分から通時的に検討し、中国における法制の変化を、国家権力の側からに止まらず、民間の側からも捉えようと試みるものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
第2年度である2023年度は、中華民国前半期(1912年~1920年代)を中心にして史料の収集と考察を行った(但し、1930年代の史料についても収集と分析を行っている)。 その結果、前年度の研究で明らかとなった、清代末期(1911年以前)における地方の民間エリート層により組織された「息訟公所」や地方議会のような紛争解決組織は、中華民国期に入ってからは(清朝最末期の地方議会組織を定めた法でそうした組織に関する規定が置かれなかったこと、そして中華民国初期の袁世凱政権による地方自治の縮小等により)直接的にはその後の時代に受け継がれず、組織自体としては概ね断絶したと見られることが分かった。 その一方で、地域住民による紛争解決に特化した組織を設置するという考えや、それが「司法」の領域よりも「地方自治(あるいは地方行政)」に馴染むものとして認識されるという傾向は、中華民国期(1930年代)に至っても断絶することなく継続していたことが分かった。また、「息訟会」のような中華民国期に見られる地域住民を構成主体とする紛争解決組織は、清末の紛争解決組織が江蘇省や天津・上海といった主に中国の東部(沿海部)地域で確認されているのに対し、山西省のような内陸部においても見られるようになっている。 加えて、中華民国期の紛争解決組織が清末のものと異なる点として、清末には紛争解決組織が「県」(日本で言う市町村レベルの行政単位)に対応して設置されていたのに対し、行政村のようなより下級の単位に対応して設置される傾向にあったこと、構成員が必ずしもエリート層に限られなくなっていることも指摘できる。 つまるところ、清末に見られた「地方自治という枠組みでの民間による紛争解決組織」といった位置付けは、より多くの地域へと広がりを見せると共に、以前よりも地域住民に近い存在へと変化する傾向にあったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題を解明するため、前年度と同じく、極力多くの地域の多種多様な史料の収集と分析を行った。 その結果、中華民国期(特に前半の1920年代まで)における民間を主体とする紛争解決の方向性として、清代末期に(中央レベルでなく)地方レベルで登場した「地方自治の一環としての紛争解決」という枠組みで民間による紛争解決が維持されていたこと、一方で紛争解決に当たる主体が、必ずしも従来と同じエリート層を中心としたものとは言えず、それ以外の人々も紛争解決に参与する仕組みへと変わりつつあったという見通しを明らかにすることができた。 この点で、当初目指していた第2次年度内における研究の目標は、概ね達成されたと考えている。 なお、収集できた史料には地域的偏りがあり、その内容・精度も均一とは言えない。また海外での史料調査はコロナの影響が過ぎ去ったばかりということもあり、見合わせざるを得なかった。前年度と同じく、広大な中国全ての地方における事象を解明できた訳ではなく、研究で明らかにできなかった地域の実情については、今後も検討すべき重要な課題として残されたままであるが、この点は中華民国期の研究においては避けて通れないため、検討を重ねる予定である。 以上より、上記の通り評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、中華民国期を主な対象として史料の収集・調査と考察を継続する。従来通り各地域の実態を伝える多種多様な文献を幅広く調査することはもちろん、過去2年度中に十分解明することができなかった、民間での紛争解決と近代的裁判制度との関係についても注意を払って研究を進める。 また、史料の残存・調査状況にもよるが、過去と現代との関係をより深く考えることに資するよう、中華民国期はもちろん(本研究課題の直接の対象ではないが)その後の中華人民共和国における紛争解決との関連についても、何らかの関連や影響がないか注意を払いたいと考えている。
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