Project/Area Number |
22KJ0796
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Project/Area Number (Other) |
22J11231 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚崎 夏子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2022: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 栄花物語 / 歴史物語 / 儀礼 / 遊猟 / 子日 / 物語文学 / 安和の変 / 古記録 / 官職呼称 / 式部卿 / 人物造型 |
Outline of Research at the Start |
本研究は『栄花物語』の儀礼記事・人物記事を検討し、そこに内包される政治性を明らかにすることを主眼とする。研究の最終目標は、物語独自の歴史叙述の在り方の考察である。 現在は、巻一「月の宴」巻を中心に調査を進めており、村上天皇皇子の為平親王の官職呼称や子の日の宴の記事の分析から、安和の変のきっかけになったとみられる為平親王の立坊問題の真相に関連する、『栄花物語』独自の見解や歴史観の解明を試みている。 『栄花物語』という作品が歴史書としての性質を持ちながらもあえて仮名文を用い、全く新しい「物語風の文体で書かれた歴史」を創出したことの意義や効果について、本研究を通じて新たな見解を提唱することを目指したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である『栄花物語』①儀礼記事の分析②人物に関する叙述の分析のうち、本年度は、昨年度取り組むことができなかった①の研究を進展させた。 月の宴巻では、安和の変記事の直前に子日遊記事が挿入され、「童におはしまししをり」の為平親王の輝かしい一幕が回想される。記事の最後、視点は冷泉朝に戻り、「四の宮帝がねと申し思ひしかど、いづらは」「源氏の大臣の御婿になりたまひしに、事違ふと見えしものをや」という「世にある人」の言葉が語られて、物語はいよいよ安和の変の発生した安和2年の叙述へと動き始める。為平が「帝がね」であったことを象徴的するエピソードとして子日遊の話が選択されているのはなぜか疑問に感じ、本年度は子日儀礼についての調査に取り組んだ。 本研究では第一に、歴史物語・私家集・古記録類から為平子日遊当日の様子についての記述の収集と比較を行った。『栄花物語』『大鏡』は当日宮中から出立する様子と扈従の人々についての叙述が主であり、『大鏡裏書』所引の『村上天皇御記』逸文は狩猟と獲物の献上および酒宴があったことを記している。また、『西宮記』巻八の裏書所引「佐忠私記」が、当日「天気」「宮令旨」により多くの官人が為平に従ったと述べており、この催しの背後に為平の父母の意向があることが明らかになった。 次に、為平の子日遊の儀礼としての意義と位置付けを検討した。儀礼としての子日の宴や野遊びの由来や変遷に関する先行研究は豊富に存在したため、それらの成果を学ぶと共に、自身でも古記録や儀式書類にあらわれた子日儀礼および遊猟の記述、また扈従の人々の装束例の収集に注力した。 その結果、為平の子日遊は宇多天皇の北野行幸を先蹤とした疑似的な野行幸あるいは東宮行啓であり、この頃父母の間で為平の将来的な立坊が内定したために、子日にかこつけた郊外での遊覧という形で諸臣や民衆へのお披露目の場を設けたのではないかと結論付けた。
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