Project/Area Number |
22KJ0929
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Project/Area Number (Other) |
22J14006 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 37010:Bio-related chemistry
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 祐悟 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 生物物理学 / 触媒化学 / エピジェネティクス / 液-液相分離 / ヒストン / アシル化 / クロマチン |
Outline of Research at the Start |
染色体上のヒストンの化学的な修飾(PTMs)は、遺伝子の発現・複製といった生命の中心的過程の制御に重要な役割を果たしており、PTMsの制御は生物・医学上重要である。近年、クロマチンは領域ごとに液-液相分離(LLPS)により区画化され、そこに濃縮された生体分子が区画単位でPTMsの効率的な調節を行っていると示唆されているが、この過程や、これを活用した人工的なPTMsの制御法は研究途上である。本研究では、クロマチンの液滴を人工的に形成させるモデル系を確立することで、染色体のLLPSの基礎的知見を明らかにするとともに、そこに触媒分子を濃縮し、人工的な反応の場として用いる手法を確立することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
クロマチンは、遺伝子の発現・複製といった生命の中心的過程の主役となる重要な生体分子である。またそのような過程の制御においては、ヒストンの翻訳後修飾(PTMs)が重要な役割を果たすが、近年、クロマチンは領域ごとに液-液相分離(LLPS)により区画化され、そこに濃縮された生体分子が区画単位でPTMsの調節を行っていることが示唆されている。 本研究では、クロマチンを含む液滴を人工的に形成させ、そこに触媒分子を濃縮することで、液滴を反応場として用い、その中においてクロマチンに対する修飾反応を加速することを目指す。触媒分子としては、申請者の所属研究室で開発した、生細胞内でヒストンをアシル化できる低分子触媒を用いる。本研究は、液滴内における空間選択的かつ高収率のヒストンPTMsの導入を可能にし、従って、遺伝子選択的かつ効率的な人工的PTMs制御への道を開くことが期待される。 2022年度は、人工的に液滴を形成し、そこを反応場として用いるという、本研究の核となるアイデアの妥当性を実証した。まず、験管内においてクロマチンモデル分子の液滴形成を誘導し、触媒分子を加えた際に、液滴が形成される条件下では液滴が形成されない条件と比較して、反応が有意に加速されることを示した。遠心分離を用いた分画により、反応は液滴を含む画分で加速されていることも明らかになり、さらに、動的光散乱法による反応系中のパーティクルサイズの測定により、パーティクルの大きさと反応の促進効果は強く相関することが示唆された。触媒分子の代わりに蛍光分子を用いた実験により、液滴内に触媒分子が濃縮されていることを示唆するデータも得ており、仮説通り、液滴内において、分子の濃縮を含む液滴形成の効果により反応が加速されていると結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、2022年度は本研究の核となるアイデアの妥当性を実証し、本研究で開発した系の詳細な解析を進めることができたため。 遺伝子領域選択的な液滴形成の誘導に関しては、細胞集団や、細胞集団に対する操作において生じる操作の不均一性に関連して、予期した以上の実験上の課題に直面し、本研究で開発した系を用いて遺伝子特異的に液滴を形成するためには予想以上の時間的コストがかかることが判明したため、実験計画の変更があり、当初実施計画で目指す進捗に至っていない。一方、液滴内において分子の濃縮を含む液滴形成の効果により反応を加速するというコアアイデアの実証や解析に関しては、仮説の妥当性を強固にする当初計画以上に詳細なデータが得られた点や、プローブを用いた反応加速効果のさらなる詳細なメカニズム解析に着手するなど、計画以上の著しい進展があり、全体として本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した系により誘導される液滴内で触媒反応が加速されるメカニズム解析や、液滴内の物理化学的環境の解析について、これらが予想以上に進展している点や基礎科学的重要性に鑑み、これらを最優先事項として研究を進める。 遺伝子領域選択的な液滴形成の誘導に関しては、遺伝子選択的に液滴を形成することを目指したが、試行した条件では多数の液滴が形成されてしまい、ターゲット配列での遺伝子領域特異的な液滴形成が明確には確認できなかった。トランスフェクションを行った遺伝子について、細胞間で均質に発現量の制御を行うことが困難であり、最適化を試みたものの、核形成の過程を十分制御できなかったことが一因であると考えられる。ターゲットとして多数の繰り返し配列を予め持つ細胞株を用いることや、安定発現細胞株の樹立、異なるDNA結合因子を用いるといった解決策が考えられる。ただし、生細胞内における反応に関しては、優先度を下げて研究を進める。
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