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発熱する花序をもつタコノキ属の送粉様式の解明と花器官発熱に関する新しい仮説

Research Project

Project/Area Number 22KJ1056
Project/Area Number (Other) 22J21377 (2022)
Research Category

Grant-in-Aid for JSPS Fellows

Allocation TypeMulti-year Fund (2023)
Single-year Grants (2022)
Section国内
Review Section Basic Section 45040:Ecology and environment-related
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

宮本 通  東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2023-03-08 – 2025-03-31
Project Status Granted (Fiscal Year 2023)
Budget Amount *help
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Keywords送粉生態学 / タコノキ科 / ケシキスイ科 / 小笠原諸島 / アザミウマ科 / 発熱植物 / 共進化 / タコノキ属 / ハナケシキスイ属 / 琉球列島 / ニューカレドニア
Outline of Research at the Start

①琉球列島のアダンは、花序で繁殖するハナケシキスイ属の一種によって送粉されることが明らかになったが、他の地域に分布するタコノキ属の送粉者は明らかになっていない。世界のハナケシキスイ属はタコノキ属の花序からの記載例が多いことからも、両者が未知の共進化系である可能性を視野に入れ、検証していく。
②植物の花器官の発熱の適応的意義において、これまで「熱の感知できる送粉者の誘引」は考えられてこなかった。世界中で熱を検知できる昆虫が見つかっていることから、発熱植物の送粉者もまた熱を感知している可能性がある。ここで、発熱植物であるアダンをモデルとして、送粉者であるケシキスイが熱を感知している可能性を検証する。

Outline of Annual Research Achievements

本年度は、主に小笠原諸島にて固有種のタコノキの送粉様式の調査を行った。その結果、Projectothrips属のアザミウマの一種が雌雄の花序から大量に見つかり、体表に花粉が付着していることや雄花序で幼虫が大量に見つかることなどから、このアザミウマが花序で繁殖する送粉者である可能性が示唆された。また、これまでの調査によりタコノキはアダンと同様に雌雄の花序が発熱することが確認されている。そこで、タコノキの送粉者と熱との関係性を調べるため、前述のアザミウマを用いて熱誘引実験を行った。実験には、外気温を想定した25℃に設定したトラップと、花序の温度を想定した35℃に設定したトラップを用いてアザミウマの誘引を試みたが、結果として35℃のトラップには25℃のトラップに誘引されたアザミウマのおよそ2倍の数のアザミウマが誘引される結果となった。

また、琉球列島に分布する発熱植物であるアダンの送粉者であるケシキスイにおける熱誘引実験を行った。タコノキに訪花するアザミウマと似た手法で様々な実験条件を変えてケシキスイの誘引を試みたが、結果としてケシキスイが外気温より高温なトラップに有為に誘引されるという結果は今回は得られなかった。アザミウマとケシキスイは、体のサイズや行動パターンなどが異なるため、さらなる実験デザインの見直しが必要である。

そのほか、コスタリカにて新熱帯の発熱植物とその訪花者であるコガネカブト属の関係の予備調査、およびこれまでの調査結果をまとめた論文の執筆を遂行した。論文の概要は、これまで風媒であると考えられていたタコノキ属において、アダンをモデルとして花序で繁殖するケシキスイによる送粉と花序の発熱をタコノキ科で初めて報告した、というものである。論文は3月28日付でBotanical Journal of The Linnean Society誌に掲載された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度はこれまで風媒だとされていたタコノキ属の送粉様式について新しい示唆的な知見が加わった。今までの我々の調査によって、琉球列島などに分布するアダンではケシキスイによる送粉が行われていることは確認されていたが、今年度の調査により海洋島である小笠原諸島ではケシキスイよりもアザミウマによる訪花が卓越していることがわかった。当初、小笠原諸島でも琉球列島のアダンと同様にハナケシキスイ属Amystropsのケシキスイが訪花しているのではないかと予想が立てられたが、実際にはケシキスイよりもっぱらアザミウマが優占していたことは意外であった。これはタコノキが小笠原諸島に進出した際に送粉者シフトが起きている可能性を示唆しており、植物の海洋島への進出と送粉者との共進化の関係性に新たな知見をもたらすモデルの一つとして位置づけることができる可能性がある。

一方で、ハナケシキスイ属の未記載種とみられるケシキスイもわずかではあるがタコノキの花序及び葉鞘から採集されており、この種の生態やタコノキとの関係、またほかのハナケシキスイ属昆虫との系統関係を解析することはタコノキ属とハナケシキスイ属の共進化関係を解明する手掛かりの一つとなりうる。

また、発熱植物であるタコノキにおいて、その主たる訪花者のアザミウマが35℃程度の熱に対する正の走性があることを示唆する結果が得られたことも、当研究課題の「発熱植物とその送粉者における熱コミュニケーション」という観点においては、一定の進展があると評価することができる。しかしながら、行動実験の精度をより洗練させることに課題があることや、アザミウマの高温トラップへの誘引が「熱」による誘引なのか「赤外線」による誘引なのかを評価するまでは至っていないことは、発展的な課題であると評価できる。

Strategy for Future Research Activity

今後の課題としては、(1)世界のタコノキ属とハナケシキスイ属との間で共進化が起きているかどうかの調査、(2)タコノキ属とその送粉者をモデルとした発熱植物とその訪花者の間で起きている「熱コミュニケーション」の検証、の2つの軸で研究を推進させていく予定である。

(1)については、アダンでケシキスイ媒が発見された琉球列島から出発し、日本の海洋島である小笠原諸島、小さい面積ながら固有種が20種分布しているニューカレドニアを主なフィールドとして、全く未知であるタコノキ属の送粉様式の解明に取り掛かりたい。特にニューカレドニアでは2022年の調査により、雄花序の標本からケシキスイ科とみられる幼虫および成虫が見つかっていること、固有種のひとつであるPandanus bernardiiの葉鞘からハナケシキスイ属の一種が見つかっていることなどから、アダンと同様にハナケシキスイ属による送粉が起きていてもおかしくないことが予想され、現地でのタコノキ属の開花期に集中的な野外調査を遂行することを予定している。また、これまで日本産ハナケシキスイ属はヤシ科のクロツグを宿主とするクロツグハナケシキスイ一種のみであったが、我々の調査によりアダン、タコノキからそれぞれ未記載のハナケシキスイ属が1種ずつ(計2種)採集されていることから、これらの種の記載も目標の一つとして設定したい。さらに、ハナケシキスイ属を含む近縁種との系統関係を明らかにするためのDNAを用いた系統解析も行うことで、タコノキ属との共進化関係も解明していきたい。

(2)については、一定の成果を得られているタコノキとその訪花者であるアザミウマを用いて、発熱植物とその送粉者で「熱」による誘引と「赤外線」による誘引を検証するための行動実験を遂行する予定である。一方で、アダンに集まるケシキスイについても同様に探索的な誘引実験を継続していきたい。

Report

(2 results)
  • 2023 Research-status Report
  • 2022 Annual Research Report
  • Research Products

    (2 results)

All 2024 2023

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Pollination of thermogenic inflorescence of Pandanus odorifer by a specialist Amystrops sap beetle that reproduces on the male inflorescence2024

    • Author(s)
      Toru Miayamoto, Ko Mochizuki, Atsushi Kawakita
    • Journal Title

      Botanical Journal of the Linnean Society

      Volume: 20 Issue: 2 Pages: 1-12

    • DOI

      10.1093/botlinnean/boae012

    • Related Report
      2023 Research-status Report
    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] タコノキ科アダン2023

    • Author(s)
      宮本通、望月昂、川北篤
    • Organizer
      日本生態学会
    • Related Report
      2022 Annual Research Report

URL: 

Published: 2022-04-28   Modified: 2024-12-25  

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