Project/Area Number |
22KJ1102
|
Project/Area Number (Other) |
22J22075 (2022)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 乃亜 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2024: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
|
Keywords | アルチュセール / イデオロギー / 哲学の新しい実践 / 理論と実践の統一 / フランス共産党 / 国際共産主義運動 / 大衆 / 自己批判 / 『マルクスのために』 / 『資本論を読む』 / マルクス主義哲学 / 史的唯物論 / 歴史 / 理論 / 移行 |
Outline of Research at the Start |
20世紀フランスのマルクス主義哲学者ルイ・アルチュセール(1918-1990)の思想を「哲学」の政治性という観点から再検討する。その際、彼の思想における「哲学」の問題を1960年代後半以後前景化する「イデオロギー」の問題と併せて考察することで、「理論的実践の〈理論〉」という「マルクス主義哲学」の定義を自己批判する形で練り上げられた「哲学の新しい実践」という定式の理論的核心と実践的意義を、国際共産主義運動を取り巻く社会情勢の変化とともに生じた政治組織や国家をめぐる具体的諸問題との関連において解明することを目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、1965年から68年にかけてのアルチュセールの思考の変遷を詳細にたどることで、『マルクスのために』と『資本論を読む』を65年に発表した後にアルチュセールが行った「自己批判」の問題を検討した。 67年の「批判的・自己批判的ノート」においてアルチュセールは、「理論的実践の〈理論〉」たる「マルクス主義哲学」の構築を目指した65年の著作が、「理論と実践の統一」という観点を欠いていたことを自己批判している。近年公刊が進んでいる草稿群を読み込むことで、この自己批判が、かつての統一を失いつつあった国際共産主義運動の「組織」原理を再定礎しようとする実践的な関心を反映するものであることがわかった。「認識論的切断」のテーゼのもとで消極的にのみ捉えられていた「イデオロギー」は、政治的実践における党と大衆の関係の一つの「指標」として積極的な実在性を認められることになる。このように理論とイデオロギーの関係を「理論主義」的な形ではなく、「理論に対する実践の優位」を肯定する形で思考しようとする試みは、大衆を支配するのではなく、大衆自身に「歴史を作る」役割を演じさせるための政治的「指導」を模索する試みと両輪をなすものであった。 そしてこのように実践との「統一」のもとで理論とイデオロギーの関係を思考する「哲学」は、決して中立的なものではありえず、必然的に政治性を帯びたものとなる。「切断」は、真/偽の合理主義的区別に対応する純粋理論的な「対象(objet)」ではもはやなく、階級分裂の廃棄という実践的「目標(objectif)」との関係において、具体的な「状況」のもとでその都度位置を指定されるべきものとなる。 以上のようにして、「理論と実践の統一」および「イデオロギー」の問題から出発した自己批判が、いかにして「哲学」の政治化へと転回していったのかを明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルチュセールの「自己批判」の意義をその政治的背景を踏まえたうえで理解するという当初の目標をほぼ予定通りに達成することができた。近年公刊された草稿の読解に注力した結果、今年度中の成果公表に至らなかったため「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究を通じて、アルチュセールにおける哲学の政治性というテーマについて重要な見通しを得ることができた。それは、アルチュセールにとって哲学という「理論における政治」は、現実の共産主義運動の政治と同様に、「大衆」という他者的要素との関係において戦略的に編成されるべきものだということである。自己批判がもたらしたこの新たな探求の線は――「大衆」が歴史の舞台に現れる――「六八年五月」という出来事を経て、70年代のフランス共産党の議会政党化(「ユーロコミュニズム」の影響下での社会党との「左翼連合」戦略、第二二回大会における「プロレタリア独裁」概念の放棄)に抗する形で練り上げられることになる「共産主義の戦略」を予告するものであった。報告者の博士論文は、アルチュセールが哲学と政治にもたらそうとした革新の意義をこの「共産主義の戦略」という観点から解明しようとするものになるだろう。最終年度では、今年度の成果をさらに発展させるべく、フランス・カーンのIMECで網羅的な草稿調査を行い、まとまった成果公表へと結実させたい。
|