Project/Area Number |
22KJ1116
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Project/Area Number (Other) |
22J22416 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 35010:Polymer chemistry-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
數實 治己 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 超分子 / 自己組織化 / 結晶化 / ナノシート / 擬ポリロタキサン / シクロデキストリン |
Outline of Research at the Start |
ポリマーと環状オリゴ糖の自己集合体である擬ポリロタキサンナノシート(PPRNS)は医療用生体材料等への応用が期待されている。一方でそのために重要な、PPRNS中の軸分子鎖の折れ畳み構造を制御する方法は見出されていない。本研究では、PPRNSの厚さや結晶構造・組成の変化を解析することで軸分子鎖折れ畳み構造の観点から形成機構を解明するとともに、折れ畳みを利用したPPRNSの構造・物性制御を実現する。
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Outline of Annual Research Achievements |
①各種実験条件の最適化:昨年度までに明らかになった擬ポリロタキサンナノシート(PPRNS)の軸分子折れ畳みに関する構造変化について、その機構や傾向をより明確に測定結果として抽出できるように、PPRNSの形成条件および各種測定条件の最適化を行った。形成条件については、構造変化が顕著にみられかつ720時間以内に終了する濃度・温度等の条件を調べ、可能な限りそれに統一した。AFMによるナノシートの厚さ評価やNMRによるPPRNSの形成量および組成の評価についても、実験誤差を軽減できるよう解析手法を改善し、高精度な定量的評価を行うことに成功した。 ②軸分子折れ畳み変化の明確な確認方法の確立:PPRNS中の軸分子の折れ畳み変化について、イメージプロットとして明確に示すことに成功した。特定条件下での折れ畳みは4つ折りから2つ折り、伸びきりへと明らかに不連続に変化しており、類似研究である高分子ラメラ結晶と比較してもより特異かつ顕著な構造変化が観測された。シクロデキストリン(CD)の結晶性と軸分子による厚さ制御の相乗効果により、実像観察で確認できるほど明確な構造変化が生じた可能性がある。 ③物性制御:折れ畳みの異なるPPRNSについて、希釈による崩壊を引き起こし、崩壊過程をUV-Vis、SAXS、NMR等で追跡することによって安定性等の違いを調べた。その結果、折れ畳みの少なく分厚いPPRNSほど、希釈に耐性があり崩壊しにくいことが判明した。先行研究によって明らかにされたPPRNSの崩壊メカニズムと併せると、この結果は擬ポリロタキサン(PPR)同士の引力相互作用がナノシート全体の安定性に寄与したものと解釈できる。また、これまでの結果から我々が考察している、オストワルド段階則に基づく折れ畳み変化のモデルも本実験により裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の目的は、(i)PPR折れ畳みの経時変化機構の解明、(ii)折れ畳み数の制御、(iii)折れ畳み数によるPPRNSの表面機能・付着性・分解性制御である。(i)(ii)は2023年度前半までに取り組む計画であり、既に概ね完了している。 (i)については、AFMやSAXSから充分な量のデータが得られており、オストワルド段階則に基づいて準安定な薄いPPRNSから安定な厚いPPRNSに変化したものと解釈している。 (ii)については、当初計画していた形成時間・形成温度・濃度・PEG分子量の4条件のうち、濃度以外の3条件で制御方法を確立することに成功した。濃度のみ明確に依存性を確認できなかった。また、追加でPEG末端官能基の修飾による制御にも成功した。これらの結果からは、PPRの折れ畳み構造やPPRNSの形成について、高分子ラメラとの共通点やトポロジカル超分子独自の特性など多くの知見が得られた。一方で、得られた折れ畳み数は4つ折り・2つ折り・伸びきりが主で、3つ折り・5つ折り以上は稀であり、その原因は判明していない。 (iii)については、希釈に対する分解性の制御に成功し、(i)(ii)の結果や先行研究と矛盾しない結果が得られた。熱に対する分解性については、水分を多量に含んだPPRNSにおいて、再現性の高い熱分析を行うことが困難であり、解決策を模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は折れ畳み数によるPPRNSの物性制御を主に進めていく。当初の計画通り分解性・付着性・表面機能について調べるが、具体的な手法は変更を検討している。分解性については、PPRNS形成後にPEG末端基をかさ高い置換基で封鎖したり架橋することによってシクロデキストリンの脱包接を阻害し、PPRNSの崩壊過程が変化するかを調べる。付着性については、折れ畳み数および厚さの異なるPPRNSにおいて、様々な凹凸表面への付着状態を比較することで、構造が曲げ剛性に及ぼす影響を明らかにする。表面機能については、PEG末端基のイオン性官能基による修飾や末端封鎖・架橋がPPRNSの分散性や付着状態に及ぼす影響を調査する。 また、【現在までの進捗状況】で述べた3つ折り・5つ折り以上のPPRが得られにくい問題についても、物性制御の結果をフィードバックしながら引き続き原因を探っていく。さらに、構造変化の機構解明や制御について得られた成果を論文化し報告する。
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