Project/Area Number |
22KJ1158
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Project/Area Number (Other) |
22J23120 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桐谷 詩絵音 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 都市空間 / デモ / 街頭討論 / 歩行者天国 / 路上パフォーマンス / 身体 / 都市コモンズ論 / 広場 / 都市 / 抗議行動 / 空間 / 祝祭 |
Outline of Research at the Start |
元々の交差点が広場のような場所に変わる「渋谷ハロウィン」に代表されるように、互いに見知らぬ人間が自然発生的に集まることで、空間のもともとの役割がおおきく転換される現象は、都市という社会の本質を劇的に体現している。本研究は、人びとが集まり行為するなかで、どのように空間を自分たちに独自の仕方で変革していくのかを分析することをつうじて、「都市とは何か」を明らかにすることを狙う。近代東京における広場的な現象の歴史を追うとともに、現代の世界各地での同様の現象を分析することで、不特定多数の人間の集まりからどのように社会が立ちあげられていくのかという人類社会の根底的な問いを解き明かす。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市の社会学的研究であまり注目されてこなかった、ある一箇所の空間に不特定多数の人々が集まるという都市的集合現象に注目する。この現象のメカニズムを解明し、「都市的なものとは何か」という都市社会学の根本的な問いに大きく貢献することを目的としている。 本年度は以下の3つの課題に取り組んだ。①1960年安保闘争の都市的な集合現象としての解明、②1960年代後半の新宿西口地下広場および1980年前後の原宿歩行者天国の都市的な集合現象としての解明、③以上の事例分析の成果を総合し普遍的な都市社会学理論として体系化する作業。 課題①について、安保反対デモでは、もともと沿道の傍観者だった人々が、等身大の参加者や周辺の街路空間、他の沿道の野次馬たちをまなざし、相互の身体を視覚・聴覚・触覚を通じて感受・触知する遂行的な交流実践によって、主体的にデモに参加できたことを解明した。 課題②について、新宿西口地下広場では、学生運動家に質問する通行人に対して別の通行人が反論することで見知らぬ人々同士の討論が成立し、野次馬的な傍聴者の中から司会者や調停者、討論者が流動的に生まれることで、持続的な討論実践が可能になっていたことを解明した。また原宿歩行者天国では、服装や路上空間を転用する実践が媒介となり、人々が異なる資源を歩行者天国に見出しながらパフォーマンスを行う中で空間が成立していたことを解明した。 課題③について、互いに見知らぬ人々が資源を共有する局面に都市特有の集合形式を見いだす英語圏の都市コモンズ論の先行研究を援用し、東アジア・オセアニア諸都市での実地調査と対照する中で、課題①・②の両事例を通底して成立する都市の集合メカニズムを析出できることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて研究の遂行に制約が存在したものの、文献調査や国内外での実地調査と成果発表を実行し、予定以上に研究課題を推進させることができた。 課題①の成果は、査読誌『社会学評論』で従来研究に新視角をもたらす成果として評価され、2024年6月刊行予定の297号に掲載・発表予定である。また、2023年12月の国立台湾大学・東京大学共同開催「台大社會系―東大社會系雙邊論壇」学会で英語で口頭発表(招待あり)するなど国際的に発信した。 課題②の成果は、査読誌『日本都市社会学会年報』で2回の査読を経て、現在、編集委員会による最終確認中である。また2023年6月のメルボルン開催の国際社会学会(ISA)総会XXで英語で口頭発表(選抜あり)するなど国際的に発信した。また2023年10月の立正大学開催の第96回日本社会学会大会でも口頭発表し、国内にも広く発信している。事例当事者が開催する集会等に参加するなど、自身の領域横断的な視野の拡大に努めている。 課題③の成果は、2024年7月にチリ・サンティアゴ開催予定のRC 21都市地域開発2024国際学会での口頭発表が決定している。2024年5月にソウル大学開催予定の韓国地域社会学会・日本都市社会学会共同セッションでの口頭発表も決定している。さらなる国際的発信に意欲的に取り組んでいる。 これらの成果は、本年度中に行なった日本国内・韓国・台湾・豪州・ニュージーランド諸都市での実地調査と突き合わせることで、複数事例を通底する都市的集合現象の理論としての洗練化の端緒を掴むことができた。以上の点で、研究の進展・発信の両面において大きな達成をみることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、原宿歩行者天国のさらなる史料分析や、追加事例のフィールドワークとともに、本研究課題である都市的集合現象メカニズムの解明について最終的な研究成果の取りまとめに取り組む。 原宿歩行者天国をはじめとする戦後東京の事例について、雑誌記事・ミニコミ誌などの文献調査や記録映像調査、実地調査などから分析をさらに進め、社会学的空間・実践理論と対照しつつ、体系的な都市空間理論として完成させていく。また現代の事例について、先行研究の文献調査や東京実地調査から明らかにしつつ、過去事例との比較検討を行う。都市空間における人びとの集合がもつ社会的ダイナミズムについて、歴史的視角から先行研究群を批判的に発展させることを目指す。 また最終年度として、経験的な事例分析の理論的検討を完成させる。都市コモンズ論をはじめとする空間理論や実践理論を総合し、事例研究で得た知見と合わせることで、従来都市研究を理論的に刷新する。 得られた成果を同時進行的に発表していく。国内学術誌への投稿や学会報告だけでなく、RC 21都市地域開発2024国際学会や韓国地域社会学会・日本都市社会学会共同セッションなど、国際学会発表を積極的に行い、国際学術誌に向けた論文執筆を進める。また領域を横断する学術的貢献を行うため、都市社会学だけでなく人文地理学、国際的な日本研究などの分野での位置づけを意識しつつ、積極的に発信していく。以上の経験研究・理論研究・成果発表を絶え間なく往還する中で、日本の都市研究の発展に大きく貢献する指導的な研究者となることを目指す。
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