Project/Area Number |
22KJ1162
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Project/Area Number (Other) |
22J23221 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長澤 咲耶 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | カロリング期フランク王国 / 王権論 / 説教集 / 聖書注釈書 / 公的贖罪 / 説教 / 聖書注釈 |
Outline of Research at the Start |
カロリング期フランク王国、とりわけ9世紀半ば以降の王たちの内戦期に、王たちに聖職者エリートから献呈された著作を分析対象とし、理想的君主像やkingship論に関して考察する。そのために従来「君主鑑」と言われていた史料ジャンルに縛られることなく、王に献呈された「説教テクスト」や「聖書注釈」にも目を向けて、包括的に分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度まではラバヌスが抱いた理想的君主像や王権論を明らかにするために、ロータルに献呈された聖書注釈書や説教集を分析してきた。その際、各著作を同時代的文脈に位置づけていくことが課題として残されていた。というのも、ラバヌスはロータルに説教集を献呈したとされる840年代から850年代にかけて彼を支持しているものの、ルートヴィヒ敬虔帝と息子たちの間で激しい争いが発生していた830年代前半には敬虔帝を支持し、彼のために複数の著作を執筆していた。従って、彼の理想的君主像や王権論を考察するために、彼の政治的立場の変遷とそれに応じてそれぞれの時期に執筆された著作にも焦点を当てなければならないと考えた。また、同時代の政治的文脈にラバヌスの著作を位置付けるためにより広範囲のテクストを分析することも研究遂行上の課題として残されていた。 これらの課題を解決するために、2023年度は敬虔帝と息子間の内戦と敬虔帝の公的贖罪と退位に関連する史料をいくつか分析した。まず、敬虔帝非難が書き連ねられたRelatio episcoporumを分析し、当時の理想的君主像や王権論を示唆するような記述を見出した上で、同時期のラバヌスの著作に目を向けた。ラバヌスは833年に退位へと一度追い込まれた敬虔帝にDe honore parentumやDe virtutibus et vitiisを献呈した。前者でラバヌスは父に敵対した息子たちを批判しつつ、そうした息子たちへの赦しの勧めも提示した。先行研究において、後者のテクストは前者で扱われたトピックを敬虔帝の求めにより詳細に扱ったものだと考えられてきた。しかし実際この史料は現代の研究者による校訂がなされておらず、この史料の内容に関する研究も菅見の限り存在していない。それゆえ、17世紀の写しを参考にしつつテクスト校訂を行うところから始め、同テクストの詳細な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における主要な分析対象と想定していたロータル献呈説教集の分析はわずかにしか進展しなかったものの、上記のように様々な周辺テクストの分析を進めることができた。とりわけDe virtutibus et vitiisに関して、2023年度に実施した海外史料調査を通して写本にアクセスしてテクスト校訂を行い、内容の分析に入ることができたことは大きな成果である。この史料は従来研究史上で脚光を浴びてこなかったものの、ラバヌスが抱く理想的君主像や王権論を考察するためには、この史料は欠かせないということが進行中の分析で明らかになってきている。このテクストの分析はロータル献呈説教集の分析にも寄与するであろう。当該年度に実施した研究によって今後の研究の展望が開けたと評価でき、それゆえ本研究は「おおむね順調に進んでいる」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はDe virtutibus et vitiisの校訂・分析を踏まえた上で、内戦期の君主の行いにまつわる正・不正の概念を整理し、ラバヌスらテクスト著者の立場によって異なる理想的君主像や王権論を明確に提示する。この時に、ラバヌスの師であるアルクインが執筆した同名の著作や、オルレアンのヨナス、リヨンのアゴバルドといった同時代人によって執筆された著作も比較検討することで、ラバヌス自身が抱いていた理想的君主像や彼の王権論の特徴を際立たせることができるだろう。その後これらの議論をベースにロータルに献呈された説教集や聖書注釈から読み取れる理想的君主像、王権論を提示することを目指す。加えて、敬虔帝に内戦期において献呈した『列王記注釈』とその後ロータルに献呈した『エレミヤ書注釈』の分析も視野に入れ比較検討する。
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