Project/Area Number |
22KJ1176
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Project/Area Number (Other) |
22J23507 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 43010:Molecular biology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
里見 明澤 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 脳内ウイルス感染 / 脳内免疫細胞 / 免疫抑制 / 頭蓋骨骨髄 / 骨髄由来抑制性細胞 / 脳内免疫防御応答 |
Outline of Research at the Start |
脳に感染する様々なウイルスは脳炎を引き起こすことでしばしば高い致死性を示し、回復しても認知機能低下等の後遺症を残す。脳内には種々の免疫細胞が存在することが近年急速に明らかとなってきているが、どの免疫細胞が脳内ウイルス感染に対する初期防御に重要な役割を果たしているかについてはほとんど明らかとされていない。本研究では、ウイルス感染後の脳内免疫細胞の種類や性質を調べることで、ウイルス抵抗性と個体回復に寄与する脳内免疫細胞集団を同定することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳に感染する様々なウイルスは脳炎を引き起こすことでしばしば高い致死性を示し、回復しても認知機能低下等の後遺症を残す。脳内ウイルス感染後に脳内でさまざまな免疫細胞の数が増加することが近年示されているが(Moseman et al., 2020)、どの免疫細胞が脳内ウイルス感染に対する初期防御に重要な役割を果たし、個体生存に寄与しているかについてはほとんど明らかにされていない。また、脳内ウイルス感染後に脳内に出現する免疫細胞がどこに由来するのかについても未だ不明な点が多い。 本研究において、マウスに脳内ウイルス感染を行い、ウイルス抵抗性を示さない非回復群と抵抗性を示す回復群との間で脳内免疫細胞プロファイルに違いがある事を見出した。また、非回復群の脳内で数の多かった細胞に注目した場合、免疫応答を抑制する特徴をもつ特定の細胞種の数が有意に多いことが判明した。さらには、従来脳内に浸潤する免疫細胞は血液由来のものがほとんどであるとこれまで考えられてきたが、脳内ウイルス感染後の脳内に存在するこの特定の細胞種のほとんどが血液中由来ではなく、少なくとも一部は頭蓋骨骨髄に由来する事を見出した。そして、その特定の細胞種が脳内で抗ウイルス応答を抑制することで、十分にウイルスを排除できずに個体衰弱を惹起する可能性を示唆する結果を得ている。 本研究では、脳内ウイルス感染後の脳内に現れる免疫抑制性の特定の細胞種に着目して、その機能・動態について調べている。さらには、脳内ウイルス感染後の特定の細胞種のさらなる性質や、それらの誘導方法について調べることで、脳内ウルス感染後のウイルス抵抗性と個体回復に関わる脳内の免疫細胞の機能の全貌を明らかにする事を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内ウイルス感染後の脳内に現れる免疫抑制性の特定の細胞種(CXCR2+細胞)の脳内浸潤を、薬理的に阻害、または遺伝子改変マウスを用いて阻害したところ、その双方においてウイルス感染後の脳内でCXCR2+細胞の数が減少し、さらには感染後の生存率が有意に回復するという結果を得た。 CXCR2+細胞の脳内ウイルス感染後における機能解明に加えて、私たちは脳内ウイルス感染後のCXCR2+細胞の動態の一端を明らかにした。これまで、脳内に浸潤する免疫細胞は、血液脳関門を介して血液中から脳実質に浸潤するものであると考えられてきた。しかし、近年の研究より脳炎症時に頭蓋骨骨髄から髄膜を介して一部の免疫細胞が脳実質へ供給されることが明らかとなった(Cugurra et al., 2021)。実際に、本研究ではこのウイルス感染後の脳内のCXCR2+細胞の大部分が、血液由来ではないという結果を並体結合(Parabiosis)処理の実験より得ていた。そこで、このCXCR2+細胞が先行研究と同様に頭蓋骨骨髄に由来するのかどうかを検証するために頭蓋骨骨髄内の細胞をトレーシングする系を立ち上げた。それにより、脳内ウイルス感染後の脳内に浸潤するCXCR2+細胞の少なくとも一部は頭蓋骨骨髄由来である可能性を示唆する結果を得た。現在は、ここまでの結果をまとめて学術誌に投稿する準備を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内ウイルス感染後の脳内のCXCR2+細胞の数が感染後の症状に大きく影響することが本研究より示唆されたが、なぜCXCR2+細胞の数が個体によって異なるのかについては全くわかっていなかった。そこで、本研究より脳内ウイルス感染後に脳内で増加するCXCR2+細胞の少なくとも一部は頭蓋骨骨髄より、髄膜を介して脳内に浸潤することが示唆されているため、脳内ウイルス感染後の脳実質と髄膜の間を満たしている脳脊髄液において、CXCR2+細胞の分化・遊走に関わるタンパク質が回復群と非回復群で異なる可能性が考えられる。両群間の脳脊髄液内のプロテオームをLC-MSによって解析し、そこで得られた候補因子を先述と同様に阻害するなどして、候補因子が実際にCXCR2+細胞の脳内における数の違いに寄与するかどうかを検証する予定である。 さらには、CXCR2+細胞の両群間における数だけではなく機能的な差異について検証する為に、両群の脳内CXCR2+細胞を回収し、網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)によって有意に発現変動している遺伝子を探索する予定である。このように、CXCR2+細胞を細胞外より誘導する因子と、CXCR2+細胞の細胞内よりその動態に関わる可能性の因子を2方向から見出す予定である。
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