オルガネラ膜接触部位の可視化蛍光プローブの創製および応用
Project/Area Number |
22KJ1611
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Project/Area Number (Other) |
22J23745 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 37030:Chemical biology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 良來 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ホスファローダミン色素 / 近赤外蛍光 / スピロ環化平衡 / ハロタグタンパク質 / 細胞イメージング / STED顕微鏡 |
Outline of Research at the Start |
生命科学研究の発展により,細胞内のオルガネラ間の接触領域が重要な細胞機能を担うことが示されてきた.中でもMAMは,両オルガネラ間の機能制御に加え,多くの難病とも密接に関わる.しかし,生細胞内でその動態を特異的かつ長時間追跡する手法は未だ確立されていない.本研究では,これを可能にする有機小分子蛍光プローブを開発する.培養細胞でのMAM標識能の評価に加え,開発したプローブをALS発症細胞にも応用する.蛍光イメージング結果の比較により,疾患発症におけるMAM機能の崩壊の多面的かつ定量的な知見を探る.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近赤外蛍光特性をもつホスファローダミン色素(POR)について,その多機能化とオルガネラ膜接触部位可視化プローブへの展開に取り組んでいる.今年度は,極性応答PORの構造物性相関と細胞イメージングへの応用に取り組んだ. まず,末端アミノ基上のアルキル基の数を変換し,種々の誘導体を合成した.得られた色素群はいずれも中性緩衝液中で強い吸収・蛍光を示し,溶媒の極性環境に応答して分子内スピロ環化平衡に由来する蛍光のスイッチングが可能であった.また,アミノ基上のアルキル基が減少するに従い,吸収・蛍光波長が短波長シフトすること,スピロ環化平衡が閉環側へシフトすることを見出した. 各色素に対し,ハロタグタンパク質に対するリガンドを連結することで,細胞内オルガネライメージングに適用可能とした.吸収・蛍光が短波長シフトした色素については,近赤外領域にてSTED顕微鏡を用いた超解像イメージングに応用させることにも成功した.さらに,これらの蛍光性リガンドはハロタグタンパク質に対する特異性が高く,発現量の低い細胞種でも効率的にオルガネラを標識できることが明らかになった. 続いて,9位のアリール基の修飾を行なった.求核性置換基をカルボキシ基からスルホンアミド基に変換することで,スピロ環化平衡が大きく閉環側へシフトした.これに由来し,その蛍光性リガンドは細胞膜透過性の著しい向上が見られた.これにより低濃度条件での染色が可能となり,さらに近赤外領域の励起光を用いることで生理的環境でのイメージングに成功した.長時間イメージングの結果,細胞分裂中の細胞核の動態を追跡することにも成功した. 以上の結果から,PORにおけるオルガネライメージングへの適用性だけでなく,波長や膜透過性といった,蛍光プローブとしての重要な特性を制御できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,近赤外蛍光特性をもつホスファローダミン色素(POR)について,その構造物性相関と細胞イメージングへの応用可能性について検討した.構造物性相関については,末端アミノ基上のアルキル基の数が減少するに従い,吸収・蛍光波長が短波長シフトすること,スピロ環化平衡が閉環側へシフトすることを見出した.また,9位のアリール基の求核性置換基をカルボキシ基からスルホンアミド基に変換することで,スピロ環化平衡が大きく閉環側へシフトした.細胞イメージングについては,構造と細胞膜透過性の関連を明らかにしたほか,得られた各蛍光性リガンドを利用し,STED顕微鏡を用いた超解像イメージングや長時間イメージングにも成功した.次の段階では,蛍光性リガンドがターゲットに結合した際にのみ蛍光を示すスイッチング特性の獲得が課題であり,リンカーの種類や長さについて検討する段階まで漕ぎ着けることができた.したがって,本研究課題の進捗は順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
オルガネラ膜接触部位可視化プローブの前段階として,ミトコンドリアの膜電位プローブの創出に取り組む.PORを機能化し,ミトコンドリア標的部位であるトリフェニルホスホニウム(TPP)とタンパク質タグリガンドを導入する.今後の計画は,次の三つのステップからなる.一つ目は極性応答能を利用した,蛍光のスイッチング特性の獲得である.TPP部位と色素を繋ぐリンカーの長さや種類を検討し,通常時は蛍光オフ,ミトコンドリアに結合しリンカーがほどけると蛍光オンとなるような特性の獲得を目指す.二つ目はミトコンドリア膜電位の可視化である.タンパク質タグをミトコンドリア外膜上に発現させ,プローブで標識する.通常時は膜電位依存的にTPP部位がミトコンドリア内に取り込まれるため蛍光を示すと考えられるが,膜電位の脱分極を誘起するFCCPを添加すると,TPPが取り込まれず,蛍光を示さないと考えられる.FCCPの添加と洗浄を繰り返しながら蛍光強度変化を追跡し,可逆的な変化が観察されることを確認する.「ミトコンドリアにTPP部位が取り込まれて蛍光を示す」という特性を利用すると,タンパク質タグの発現場所を小胞体膜上に変更した際に,MAMにおいて小胞体-ミトコンドリア間をプローブが架橋し,これを特異的に検出できると考えられる.即ち,本検討項目がMAM検出プローブの概念実証となる.三つ目は膜電位プローブの疾患細胞への応用である.神経変性疾患の発症細胞ではミトコンドリアの膜電位に異常が起こることが知られており,これを可視化することで本プローブの応用可能性についても探る.
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)