ゲノム・エピゲノム異常の統合的解析による炎症性肝発癌メカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ1764
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Project/Area Number (Other) |
21J40204 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 53010:Gastroenterology-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井口 恵里子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | DNAメチル化 / DNMT3B / 炎症性肝発癌 |
Outline of Research at the Start |
ゲノム変異やDNAメチル化といった各々の発癌機序についてはこれまでに多くの研究がされてきたが、それらの互いの関係性についてはまだ研究がされておらず不明である。炎症性発癌過程への寄与が知られる酵素Activation-induced cytidine deaminase (AID)によるゲノム変異とDNAメチル化酵素DNMT3B欠失によるメチル化変動の関係を、マウスモデルを用いて評価し、その表現型や発生腫瘍における変異プロファイル・メチル化変動プロファイルを解析することで、DNAメチル化がゲノム変異を介し発癌に関与する機序を解明したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム変異やDNAメチル化など各々の発癌機序については多くの研究がされてきたが、その互いの関係性については不明な点が多い。そこで我々は、炎症性発癌に寄与する酵素Activation-induced cytidine deaminase (AID)によるゲノム変異とDNAメチル化酵素DNMT3B欠失によるメチル化変動の関係、またDNMT3B欠失によるDNA損傷の変化を、マウスモデルを用いて評価し、その表現型や発生腫瘍における変異プロファイル・メチル化変動プロファイルを解析することで、DNAメチル化がゲノムへの損傷を介して発癌に関与する機序を解明することを目標としている。 マウスモデルによる検証では、肝細胞特異的AID過剰発現・DNMT3Bノックアウトマウス(DNMT3B KOモデル)の腫瘍ではゲノム変異の数が肝細胞特異的AID過剰発現・DNMT3B野生型マウス(コントロールモデル)よりも有意に少なかった。AIDによる変異箇所はもとから全くメチル化されていない領域に集中しており、DNMT3B KOによるメチル化レベルの軽度低下はAIDの変異原性に影響を及ぼさないものと考えられた。さらに、DNMT3Bの非存在下ではAIDタンパクが不安定となりAIDの変異原性が低下していることが示唆された。これはDNMT3BがDNAメチル化に限らず多様な働きを有し炎症性発癌過程に作用する可能性を支持する興味深い結果である。 またAID過剰発現の有無によらず、DNMT3B KOマウスにおいては腫瘍の自然発生率が有意にDNMT3B WTマウスより上昇する結果が得られた。DNMT3B KOマウス肝はDNMT3B WTマウス肝に比べDNA 損傷マーカーの発現が高く、DNA損傷が蓄積していることが分かり、この表現型の理由と考えられたため、DNMT3Bがゲノム安定性に寄与するとの仮説をたて、現在検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、DNMT3B欠損がAIDによるゲノム変異にもたらす影響を調べることを主目的としており、一昨年までの実験結果より、DNMT3B欠損下ではAIDの働きが減弱することがわかってきた。 一方、昨年度の実験結果から、AIDの有無によらずDNMT3B KOにより肝細胞内にDNA損傷が蓄積すること、また、炎症刺激を加えずともDNMT3B KOのみにより肝発癌が増加することが分かり、AIDによる変異のみならず幅広いDNA損傷に対してDNMT3Bが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 DNMT3Bは分化細胞ではDNA損傷部位に局在しており、DNMT3Bの非存在下では特定のDNA損傷が多く認められるという既報(Shih H-T, et al. Cell Death Dis 2022)とも併せ、我々は、分化細胞ではDNMT3BがDNA損傷部位にDNAメチル化修復を行う働きをしているのではないかとの仮説をたてた。 そこで、当初の計画の主目的とは異なるが、この仮説を現在解析中であり、次年度の課題となる。当初の仮説とは異なる結果が得られてきていたが、その理由を十分に説明しうる追加実験結果が得られてきているため、概ね順調な経過と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
DNMT3B欠損がAIDによるゲノム変異にもたらす影響を調べるという当初の主目的とは別に、AIDの有無によらずDNMT3B KOにより肝細胞内にDNA損傷が蓄積すること、また、炎症刺激を加えずともDNMT3B KOのみにより肝発癌が増加することが分かってきたため、AIDによる変異のみならず幅広いDNA損傷に対するDNMT3Bの役割を検討する必要があると考えている。そこで、当初の計画の主目的とは異なるが、DNMT3Bがゲノムの安定化に寄与しているのではないかとの仮説を検証するため、以下の計画を立てている。
[1] DNMT3B WTおよびKOマウスの肝組織におけるDNA損傷の定量的測定・機序の特定:これまで肝組織の免疫染色により、DNMT3B KOマウス肝ではDNA2本鎖切断のマーカーであるγH2AXが高発現し、自然にDNA損傷が蓄積していくことが分かってきたが、さらに詳細にDNA損傷の定量や機序の特定を行うための実験を計画している。まず定量のためには、DNMT3B WTおよびKOマウスより作成した初代肝細胞を用いたComet assayを予定しており、DNMT3B欠損によりどの程度DNA損傷が生じやすくなるのかを明確にする。次に、機序の特定としては、大きく分けて2通りの損傷機序(酸化ストレスの蓄積、R-loopの蓄積)を想定し、それぞれに解析を行う予定である。
[2] マウス肝組織のオミックス解析:DNMT3B WTおよびKOマウス(90週齢)の非腫瘍肝組織より核酸を抽出し、全エクソン解析による変異プロファイル解析、RNAシーケンスによる遺伝子発現解析、またメチル化アレイによる網羅的なエピゲノム解析を行い、DNMT3Bが変異プロファイル、遺伝子発現、DNAメチル化に及ぼす影響を網羅的に把握して統合することにより、DNMT3B KOマウス肝で生じる異常を明らかにする。
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Report
(3 results)
Research Products
(2 results)