Project/Area Number |
22KJ1794
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Project/Area Number (Other) |
22J10065 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 東洋 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2022: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | シュティフター / 社会小説 |
Outline of Research at the Start |
19世紀中ごろのオーストリアで活躍した散文作家アーダルベルト・シュティフタ―は、戦後日本において盛んに翻訳がなされ、今日なお文筆家、研究者や読者大衆の注目を受ける作家である。しかし同時代背景に即した彼の作品解釈は、これまで1848年の諸革命に対する政治的態度ばかりに紐づけられる傾向にあった。それに対し本研究では広く社会史的、概念史的なアプローチを採用しながらシュティフタ―作品を読み解く。そのような手法を採用することによって、当時ヨーロッパ全土で流行していた「社会小説」という文学ジャンルとシュティフタ―文学との複雑かつ多面的な関係性の解明を、研究全体の目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、19世紀中葉の西欧社会における急激な近代化の流れの中で成立した社会小説というジャンルを主たる参照項としつつ、同時代オーストリアを代表する小説家シュティフターの作品の社会史的解釈を遂行することにあった。 2023年6月に行った研究発表では、1840年代半ばの社会小説批評におけるシュティフターへの言及に着目し、同評を執筆した批評家マイヤーの活動や、批評文が掲載された雑誌『ヴィーガント四分期年報』に関する包括的な分析を行った。それにより、シュティフターと社会小説の関連を実証的に指摘すると同時に、本研究全体を基礎づける知見を批評史的文脈において獲得するに至った。 同年10月には、シュティフターの用いる「人間社会」という概念の意味内容を、とりわけ彼の政治論の読解を通じて分析し、その成果を発表した。代表作『晩夏』において象徴的に用いられる「人間社会」概念を、文学以外のテキストに即して検討したことは、近代ドイツの「社会」に関する語彙の概念史的変化を重視する本研究の射程を拡大させた。 さらに同年11月には、社会小説の内容をシュティフターの短編『電気石』と比較した。都市を舞台にした同小説の成立背景や作中のモチーフを、社会史研究の知見を援用しつつ論じたことで、同時代の社会的問題が独特な形で同作に見出されると主張した。 前年度に行った文化的、社会的背景を踏まえたシュティフター作品の「社交」概念の分析も含め、本研究では予定通り多角的な観点に立ってシュティフター作品と社会小説との歴史的連関を導出するに至った。各研究成果を学術論文の形式で公表し、議論の総体を提示することが今後の喫緊の課題となる。
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