Project/Area Number |
22KJ1955
|
Project/Area Number (Other) |
22J21225 (2022)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
對馬 稔 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Keywords | イル・ハーン朝 / ラシード・アッディーン / 『珍貴の書』 / 中国医学 / イスラーム医学 / 東西交渉史 / イルハン朝史 |
Outline of Research at the Start |
モンゴル時代に編纂されたペルシア語医学書『珍宝の書』は、『脈訣』などの中国医学書の記述を基にし、中国医学をイスラーム世界に本格的に導入しようとする史上初の試みであった。しかしながら同書の記述には、漢文の逐語訳に留まらない箇所やイスラーム医学の術語が散見される。そうした記述は単なる誤訳ではなく、全く異なる理論体系を有する中国医学とイスラーム医学を接合しようとした編纂者らの努力の表れだと考えられる。そこで本研究では、中国医学書、アラビア語・ペルシア語医学書、『珍宝の書』を相互に参照することで、編纂者らの営為を明らかにし、当該時代における多文化統合の実態を明らかにしていく。
|
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続き『珍宝の書』における五行説解釈についての分析を行った。結果として、①編纂者らの五行の訳語に目次と本文で不一致が見られること、②その原因が五行説と四元素説の体系の差異に由来する可能性が高いこと、③訳語の変化が五行説と四元素説の体系的差異を乗り越えようとした編纂者らの試みを反映するものであること、④その一方で五行の性質面での解釈では四元素説における各元素の性質が優先されていること、を明らかにした。そして、上記①~④を論文にまとめ、『東洋史研究』(査読あり)に「『珍貴の書』における五行説解釈―イル・ハーン朝期における中国文化解釈の一側面―」として投稿した。同論文については、同雑誌82巻4号に掲載されている。なお、諸般の事情に鑑みて、同論文においては『珍宝の書』の書名を『珍貴の書』にあらためた。 これらの検討を行う中で、イル・ハーン朝期における自然学・形而上学・四元素説・存在論について、さらなる分析が必要であることを感じた。この問題を克服するために、昨年度の10月より、『珍宝の書』の監修者であるラシード・アッディーンの神学著作群の分析を開始した。同著作群については、1984年にvanEss, J.によって独自性の乏しさという観点から消極的な評価がなされて以降、詳細な分析がなされてきたとは言い難い。しかしながら、報告者は分析を進める中で、上記の分野について、同著作群内に他書に類を見ない独自の記述が存在することを発見した。そこで、特に存在論・四元素説に関係する記事の読解を進行中である。この分析を基礎として同王朝下における存在論・四元素説を明らかにすることで、当初予定していた課題についてもより緻密な議論が可能になると考えている。 これらの作業に加え、2024年2月28日から3月15日にかけてイラン・イスラーム共和国において資料調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、今年度は論文を提出することができ、また次の課題についても一定の見通しを得ることができた。後述するように、後者についてはすでに口頭発表が決定しており、来年度中の査読雑誌への投稿を目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
先述したように、報告者はイル・ハーン朝期における自然学・形而上学・四元素説・存在論について、さらなる分析が必要であることを感じた。そこで来年度も今年度の後期から開始したラシード・アッディーンによる神学著作群の分析を継続して行っていく。この課題については、令和6年4月26日に、所属大学の共同研究班での報告がすでに決定しており、来年度中に論文としてまとめ、査読誌に投稿する予定である。 また、今年度はイランにおける長期の資料調査を予定していたものの、現在の情勢を受けて中止を余儀なくされた。したがって、本研究課題に関連する文献の良好な写本を多く保管するウズベキスタン共和国に調査地を変更し、長期での資料調査を予定している。
|