Project/Area Number |
22KJ2006
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Project/Area Number (Other) |
22J23360 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬名波 栄志 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 脱民主化 / ポリシング / ロドリゴ・ドゥテルテ / ベニグノ・アキノ / フィリピン / 社会運動 / 運動弾圧 / チャネリング |
Outline of Research at the Start |
本研究では運動弾圧のなかでも密かに非直接的に社会運動に影響を与える社会運動弾圧手段のひとつである「チャネリング」の存在を明らかにし、民主化後フィリピンにおけるチャネリングを媒介とした政策決定者と社会運動との相互作用を明らかにする。運動弾圧研究ではこれまで警察の動員や逮捕など、目立った運動弾圧手段が注目されてきたため、資金や場所の制限、といった運動弾圧は注目されてこなかった。なお民主化後のフィリピンにおいてはマルコス政権期の戒厳令下とは異なり、運動弾圧はより地下化している。ゆえに、民主化後のフィリピンにおけるチャネリングが社会運動と政治に対してどのような影響を与えたのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、民主化の過程において暴力的な「ポリシング」(治安維持行為,”Policing” )が拡大し、脱民主化が進むフィリピン版の民主化のパラドックスを明らかにすることである。本研究では2016年に発足したドゥテルテ政権によって行われた麻薬犯罪撲滅のためのポリシング「麻薬戦争」によって二万人以上が裁判を経ずに殺害されたこと、そして麻薬戦争が国民から絶大な支持を受けたことを脱民主化と捉える。脱民主化という東南アジアの文脈の中でフィリピンを多国間比較可能な枠組みのなかで分析し、フィリピンの特殊文脈を明らかにすることが本研究の目的である。
そのため今年度もフィリピン・マニラ首都圏でフィールドワークを引き続きおこなった。フィリピン大学ディリマン校図書館での資料調査のほか、政権中心部にいたキーパーソンや活動家へのインタビューを行って、それらのインタビューデータを整理・分析した。そのなかで、ドゥテルテ政権の「麻薬戦争」を政権発足以前から支持していた人々の語りをいくつか収集することができた。なかでも、2013年に起こったベニグノ・アキノ政権下での汚職スキャンダル「ポークバレルスキャンダル」を糾弾する社会運動「ミリオン・ピープル・マーチ」の組織者38人のうち4人が本スキャンダルをきっかけにベニグノ・アキノ政権支持からドゥテルテ大統領候補支持に切り替えたことを発見した。いわばこの「転向」のメカニズムを彼ら4人のインタビューから明らかにすることで麻薬戦争のような「ポリシング」が強化されるメカニズムを部分的に明らかにした。端的に述べれば、彼らはベニグノ・アキノ政権には犯罪者に対する厳正な処罰を期待していたがそれが達成されず、よりラディカルなドゥテルテ候補を支持したことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マニラ首都圏という現地でフィールドワークを行なっているため、対面のインタビューによってラポールが築きやすく、相手から重要な語りを聞き取りやすく、かつスノーボール式にインタビュー対象者を集めることができたことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き上記の現地調査を行う。加えて、以前現地で信頼関係を構築した共産党系組織の活動家、左派系ジャーナリスト、インターンシップとして参加した現地日本語新聞「まにら新聞社」とのコネクションを利用することでよりインタビュー対象者を拡大する。具体的には元警官、元政治家、政治家へのインタビューに加え、暴力的ポリシングの被害者・遺族ら、民間調査 組織のメンバーにも行い、暴力的ポリシングに関する詳細なナラティブを収集する。彼らにインタビューを行うことで暴力的ポリシングの数の増減だけではなく、質的変化を捉える。そして、国際学会での発表に加えて、日本国内のフィリピン研究の学会でも研究成果の発表を行う。
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