Project/Area Number |
22KJ2114
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Project/Area Number (Other) |
22J10341 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 主税 大阪大学, 人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2023: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 男子学生 / 自由恋愛 / テクスト論 / 近代化のひずみ / ミソジニー / 「中国青年」 / ジェンダー / 社会主義 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近現代中国の男性性規範に関する各種言説を踏まえつつ20世紀中国文学における男子学生表象を分析するものである。近代中国の思想界を牽引した雑誌『新青年』は、男子学生の目指すべき理想像として新たに「中国青年」という概念を構築し、彼らの活躍に社会変革を期待した。だが、理念は現実との間に様々な軋轢を生じさせる。「中国青年」なるモデルが生身の男子学生に重くのしかかってきたがゆえに、理想像から零れ落ちるような男子学生も少なからず生み出されていたのである。 本研究では、従来の研究が見落としてきた後者の文学表象に焦点を当て、近代の到来がアジアにもたらした歪みの一端を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、1930年代中国における男子学生表象の諸問題について、「愛欲と革命の大学叙事──茅盾『路』における二つの版本」と題する論文を発表した。中国文壇の左傾化に伴い、文学テクストに描かれる男子学生像はいかなる変容を遂げることとなったのかを二つの版本の精読にもとづいて問うたものであり、テクスト論の視点から男子学生表象に着目することの意義を提示することができた。 また、中国文芸研究会主催の夏合宿企画「民国期の小説を読み直す」での口頭発表にもとづき、「変奏される「家族」──蕭紅「棄児」および許地山「春桃」を読む」という論文を執筆し、1930年代中国において近代家族がどのように表象されるのかを主としてジェンダー論の視点から考察を行った。なお、本論文は査読付き学術誌『野草』第112号(2024年3月末刊行)に投稿し、査読を経てすでに採録が決定している。 さらに、今年度は五四退潮期の北京に暮らす男子学生の姿を捉えた老舎の長篇『趙子曰』に着目し、前近代と近代の狭間に立つ男子学生の姿が極度に戯画化されていることの意味について、同時代の社会的言説も視野に入れながら、10月開催の日本中国学会第75回大会で発表した。今後は、ミソジニーの視点を取り入れながら、同小説をさらに精緻に読み解きたい。 以上の研究成果を踏まえつつ、特別研究員としての採用期間における研究の総括として、2月にアジア圏文学ワークショップおよび3月に民国期文学シンポジウムをそれぞれ開催し、民国期文学に描かれる男子学生なる存在が近代中国のひずみの一端を明らかにするためのひとつの重要な鍵となることを指摘した。 なお、本年度はこれまでの自身の日本語論文を中国語圏へと発表することにも努めた。その結果、国際的な学術誌である『現代中文学刊』に張愛玲小説に関する論文が査読を経て掲載されるに至った。
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