Project/Area Number |
22KJ2180
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Project/Area Number (Other) |
22J20076 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 浩司 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 表面弾性波 / 原子層物質 / 電荷密度波 / シャピロステップ |
Outline of Research at the Start |
固体表面を伝わる歪みの波である表面弾性波は、ナノスケールのデバイスにおいて、フォノンやマグノンを生成する有効な手段です。原子数層分の厚さしか持たない原子層薄膜は、基板表面に局在する表面弾性波との結合が強く、表面弾性波によって物性を大きく変調できる恰好の舞台となります。本研究では、多彩な物性を示す原子層薄膜を対象に、表面弾性波を用いてフォノン・マグノンを人工的に生成することで、物質中の多体効果と素励起との相互作用を明らかにすることを目指します。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、代表的な電荷密度波(CDW)物質であるNbSe3において、CDWのダイナミクスを表面弾性波によって変調することを目指しました。表面弾性波をNbSe3薄膜に照射し、NbSe3の微分抵抗を測定すると、スライディングが起こっている領域にピークが現れました。この現象はシャピロステップと呼ばれ、CDWに交流電場を加えたときに観測されることが知られています。 交流電場の効果を定量的に議論するために、交流電場を直接NbSe3薄膜に入力できるデバイスをSi基板上に作製し、交流電場によるシャピロステップを測定しました。一方で表面弾性波によって発生する交流電場の強さを計算し、この実験結果と比較したところ、本研究結果は表面弾性波の電場だけでは説明できず、歪みの効果が本質的であることがわかりました。また表面弾性波の歪みによるシャピロステップは、従来の電場によるものと異なる振る舞いを示すという理論計算が最近報告され、本研究結果はその理論予測を概ね再現していることがわかりました。 さらにCDWと表面弾性波の相互作用について理解を深めるために、音響電流に着目しました。音響電流とは一般に金属に表面弾性波を照射したときに電子-格子相互作用によって生じる直流電流のことです。NbSe3薄膜において各温度で音響電流を測定したところ、CDW転移温度近傍で音響電流の特異な振る舞いを観測しました。 また超伝導体や磁性体薄膜の物性制御に向けて、高強度単一パルス表面弾性波の生成に取り組みました。パルス表面弾性波の生成技術はGaAsにおける単一電子輸送に用いられていましたが、本研究ではより圧電性の強いLiNbO3基板を用い、高強度のパルス表面弾性波の生成を行いました。プロセスやデバイス構造の最適化を行い、GaAsに比べて約80倍高い効率でパルス表面弾性波が生成できるデバイスを作製することができました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、CDW物質NbSe3の薄膜に表面弾性波を照射した際に観測したシャピロステップについて、表面弾性波の歪みと電場の効果を定量的に議論することができました。その結果、理論予想を再現するという結果を得ることができました。また当初の計画にはなかった音響電流測定によって、CDW転移に伴う音響電流の特異な振る舞いを観測しました。これらの成果はCDWと表面弾性波の相互作用を理解するうえで重要であると考えられます。 さらに今年度は、LiNbO3基板において高強度単一パルス表面弾性波の生成に成功しました。この成果は超伝導体や磁性体の原子層薄膜の物性制御や、スピントロニクスへの応用に繋がるものです。 以上の理由から「当初の計画以上に進展している」と評価しました。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、CDW物質NbSe3薄膜において表面弾性波の照射によるシャピロステップを観測しました。そして対照実験と数値シミュレーションによって、交流電場と歪みの違いを調べることができました。この研究成果については、学術誌への投稿準備を進める予定です。 また今年度はCDW物質において音響電流の特異な振る舞いを観測しました。しかしこの詳細なメカニズムは未解明であり、今後は異なるCDW物質を対象とした追実験を行うとともに理論モデルの構築を目指します。 さらに今年度で確立した高強度単一パルス表面弾性波の生成・制御技術を、超伝導体や磁性体の原子層薄膜に応用し、固体中の量子多体現象を表面弾性波によって変調・制御する研究に繋げていきます。
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