I型ミオシンを根源とする細胞のキラリティによる器官の左右非対称性形成機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2192
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Project/Area Number (Other) |
22J20544 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 明日香 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ショウジョウバエ / 左右非対称性 / キラリティ / ミオシン / 細胞骨格 / 発生生物学 |
Outline of Research at the Start |
ショウジョウバエ胚の後腸は個体差の無い左右非対称性を示し、その構造は後腸上皮細胞が左右非対称な形態をとる(キラリティを示す)ことで形成される。アクチンフィラメントのモータータンパク質I型ミオシンMyoIDとMyoICは、後腸と細胞のキラリティを、それぞれ野生型、鏡像型に決定する。本研究では、これらのI型ミオシンによるキラリティ決定の分子機構を解明するため、アクチンフィラメントに結合するミオシンの構造モチーフに着目した。MyoIDとMyoICの間で各種モチーフを入れ替え、後腸と細胞のキラリティ決定の活性が入れ替わるか検証を行い、細胞・器官の階層的キラリティ形成を担うミオシンのモチーフを探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度では、後腸の捻転方向に関して、MyoID(Myo31DF)による野生型形態(右手型)、およびMyoIC(Myo61F)による鏡像型形態(左手型)を決定する、ミオシンの構造上の領域を同定することを目的とし、MyoICのアクチン結合領域であるループ構造が後腸の鏡像型形態の決定に十分な領域であることが示唆された。2023年度では、このループ構造によるF-アクチン動態の変化を、ショウジョウバエ血球細胞を用いて解析した。後腸上皮細胞のF-アクチン動態を経時的に観察することは非常で困難であるが、幼虫から採取し体外培養できる血球細胞は、明瞭なF-アクチンのレトログレードフローを示し、F-アクチンによる細胞キラリティ形成の解析に優れている。先行研究から、オプティカルフロー解析を用いることで、野生型において、レトログレードフローに時計回り(右手型)の指向性があること、さらにMyoID突然変異体及びMyoIC過剰発現体で反時計回り(左手型)の指向性があることが明らかになった。以上より、MyoIDとMyoICは、後腸におけるのと同様に、血球細胞のF-アクチン動態のキラリティを制御することが示された。そこで、MyoIDのループ構造をMyoICのものに入れ替えたキメラミオシンを、血球細胞で過剰発現させることで、MyoICのループ構造が血球細胞の左手型のキラリティ形成に十分な領域であるかを調べた。結果、このキメラミオシンは、MyoIC過剰発現体と同様に、F-アクチン回転を左手型にすることが明らかになった。以上の結果より、MyoICのループ構造は、後腸および血球細胞の左手型キラリティ形成に十分であることが示唆された。本研究から、I型ミオシンによるループ構造を介したF-アクチンのキラルな動態制御は、器官および細胞の各階層におけるキラリティ形成において重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度では、MyoICのアクチン結合領域であるループ構造が後腸の鏡像型形態の決定に十分な領域であることが示唆された。しかしMyoIDのループ構造は、後腸の野生型形態の決定に十分ではないことが分かった。2023年度では、ループ構造を含む2つのサブドメインU50K、L50Kに着目し、MyoIDとMyoICの間でサブドメインを交換させ、後腸のキラリティ決定能も入れ替わるか検証を行った。結果、MyoIDのU50K、L50Kの両方で、後腸野生型形態決定に十分であることが示唆された。以上の結果より、MyoIC、MyoIDそれぞれの後腸キラリティ決定能に十分な領域を同定することに成功した。さらに、これら同定した領域が、細胞内F-アクチンのキラルな動態の制御にも重要であるかを検証した。2023年度では、MyoICのループ構造が、後腸だけでなく細胞内F-アクチン動態におけるMyoICの鏡像型形態(左手型)決定機能に十分であることを明らかにした。以上から、MyoICのループ構造を根源としたF-アクチンのキラルな動態を根源とした、器官および細胞の階層縦断的なキラリティ決定機構が示唆された。MyoIDのサブドメインについては、未検証していないので今後行っていきたい。以上より当初の計画通りの結果が得られたことから、全体としておおむね順調に進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定した構造領域が、MyoID、MyoICのそれぞれの野生型形態、鏡像型形態決定機能に十分であることを、ショウジョウバエの左右非対称性を示す他器官でも確かめる予定である。MyoID、MyoICは、後腸だけでなくオスの生殖器、精巣の左右非対称性を野生型、鏡像型形態に決定することが知られている。そこで、MyoID、MyoICの間で構造領域を交換させたキメラミオシンを、生殖器および精巣で発現させ、後腸と同様にキラリティ決定機能を調べたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)