酸化物熱電変換材料の転位による熱伝導低減機構の解明及びその制御指針の提案
Project/Area Number |
22KJ2195
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Project/Area Number (Other) |
22J20564 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 26020:Inorganic materials and properties-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関本 渉 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 転位 / 酸化物 / 熱伝導 / フォノン / 熱電変換 / 計算科学 / 分子動力学法 |
Outline of Research at the Start |
塑性変形を担い材料中に普遍的に存在する線状の格子欠陥である転位に関して、熱伝導特性等の諸特性への影響が近年検討され始めたが、転位の微視的原子構造や転位の諸特性が熱伝導性に与える影響は未だに不明である。そこで本研究では、転位が協調的原子振動(フォノン)による熱伝導に与える影響を原子レベルの計算手法により精緻に理解し、転位による熱伝導制御機構を解明し普遍的理解へと深化させることを狙う。これにより、熱電変換材料等のデバイス性能を向上させ省エネルギー社会へ貢献することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
転位は線状の格子欠陥であり、材料中に普遍的に存在する。転位により格子熱伝導度が低減することが報告されているが、主に転位密度の増大に伴う熱伝導度低下のみが評価され、転位の微視的原子構造や組織による熱伝導性変化を研究した例はほとんどない。そこで本研究では、転位による熱伝導低下機構を系統的に解明し、新規熱伝導理論の確立を目指すとともに、転位を積極活用した熱電変換性能向上を実現するための方針を策定することを試みる。本年度では大別して以下の3点を行った。 1. モデル材料である酸化マグネシウムを用いて、拡張転位における部分転位と面欠陥である積層欠陥との相互作用が格子熱伝導に与える影響について検討を行った。その結果、完全転位とは異なる配位環境によって格子熱伝導度が変化することが明らかになった。 2. 異なる転位芯構造での転位の安定性の解析を試みた。また、転位芯構造の違いによって格子熱伝導度が異なることが明らかになった。本研究を通して、転位同士の相互作用を定量的に解析し、格子熱伝導への影響を検討することで、転位の熱伝導特性への理解が深まった。 3. 転位による電気伝導性の向上が報告されており、実際に熱電変換材料としての応用が期待されているチタン酸ストロンチウムでの転位による熱伝導への影響の解析に先んじて、チタン酸ストロンチウム完全結晶のフォノン特性の解析を試みた。その結果、酸化マグネシウムとは異なり、格子熱伝導度への寄与が元素によって大きく異なり、高周波数帯のフォノンが大きく熱伝導に寄与していることが明らかになった。これにより転位が熱伝導に与える影響について、多彩な材料系への発展が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。以下に研究計画とその進捗状況を示す。 1. 「転位同士のみならず他の格子欠陥(点欠陥や面欠陥)との相互作用にも踏み込み、それらが熱伝導機構に与える影響の解明も試みる」 一部のすべり系の転位では転位の相互作用により、拡張転位となることで面欠陥の一つである積層欠陥が導入されることが知られている。拡張転位の格子熱伝導に注目すると、部分転位と積層欠陥により完全転位とは異なる格子熱伝導度を示したことが明らかになった。転位と他の格子欠陥の相互作用による配位環境変化が格子熱伝導度に与える影響の理解が深まった。 2. 「転位同士の相互作用(原子間結合の更なる歪みや転位の相対的な安定性)による転位芯構造の変化が熱伝導に与える影響の解析を試みる。」異なる転位芯構造での一般化積層欠陥エネルギーや転位が導入されたことによるモデル全体のエネルギー変化を評価し、転位の安定性の解析を試みた。一方、転位芯構造の違いによって格子熱伝導度が異なることが明らかになった。熱伝導に影響する転位同士の相互作用を定量的に解析することにより、転位の熱伝導特性への理解が深まった。 3. 「複数の酸化物熱電変換材料で転位をモデリングし、転位による格子熱伝導度低減機構の解析を試みる。」 熱電変換材料としての応用が期待されるチタン酸ストロンチウムの完全結晶においてモデル材料である酸化マグネシウムと比較することで、結晶構造が異なる材料での転位における熱伝導性の共通点と相違点を系統的に解明するための予備検討を行った。その結果、一般的なフォノン伝導を示した酸化マグネシウムと異なり、チタン酸ストロンチウムでは高周波数のフォノンが大きく熱伝導に寄与していることが明らかになった。今後、チタン酸ストロンチウムなどの熱電変換材料で転位をモデリングし、転位近傍の配位環境変化と熱伝導特性の関係を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる転位芯構造での一般化積層欠陥エネルギーを評価したことにより、転位の安定性についての理解が深まった。そこで昨年度に引き続き、転位の移動に起因する熱輸送の定量評価のため、独自の計算コードの改良を試みる。完成し次第、結晶・転位構造が比較的単純で理解が容易な酸化マグネシウム等のモデル材料を手始めに可動転位の熱伝導解析を試み、熱伝導機構の理解を深め、新規熱伝導理論について検討する。 また、熱電変換材料への応用を念頭に、結晶構造や転位構造が異なる物質について転位のモデリングを試みる。異なる材料では転位による原子結合の結合距離や結合角の変化など、現在までに研究してきた酸化マグネシウムとは異なる因子が格子熱伝導低下に寄与する可能性がある。酸化マグネシウムやすでに予備検討を始めているチタン酸ストロンチウムにおいて転位構造や配位環境変化を比較することで、それぞれの材料での熱伝導性の共通点及び相違点を系統的に解明することで、転位に基づく熱伝導制御指針を元素や結晶構造の違いなどを包括したものへと展開を図り、その理解を通じて熱伝導制御指針の一般化を試みる。さらに、転位を積極活用した熱電変換性能向上を実現するために電子特性への影響を明らかにする必要がある。そこで転位による熱伝導制御が特に有用と判断された物質について、いくつかの転位構造の電子特性の解析を試みる。この結果を元に、工学的目的である熱伝導と電子伝導の同時制御の方針を策定し、包括的な熱電材料設計指針を検討する。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)