Project/Area Number |
22KJ2248
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Project/Area Number (Other) |
22J00298 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福田 恭子 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | ニコラ・プッサン / 風景画 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、17世紀のフランス人画家ニコラ・プッサンが描いた一連の風景画を新たに解釈するものである。プッサンの風景画は同時代から高く評価され、古典的風景画の規範として後世にも広く参照された。しかしその知的な性格と特異な図像ゆえに不明な点が多く、近年再考が促されている。本研究ではプッサン作品の多様な側面を考察するが、特に風景の地誌的な性格を指摘し、特定の土地の歴史を叙述することに画家の関心が見られることに着目する。画家の創意と作品構築の過程、顧客の文化的背景を詳らかにした上で、最終的には広く風景画という絵画ジャンルにおける歴史叙述の機能を考えたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀のフランス人画家ニコラ・プッサンの風景画を対象としている。個々の作品研究を通し、画家の創意と顧客の関心の所在を詳らかにすることを目指す。特にプッサンの風景画作品の地誌的な性格に注目し、画家が古典文学の記述や考古学的知識に拠りながら、特定の土地の歴史を叙述することに関心を抱いていたことを論じる。 初年度より調査を進めていた「神話・歴史主題の作品」については、特にプッサン晩年の《バッコスの誕生》(マサチューセッツ州ケンブリッジ、ハーヴァード大学美術館)に新たな知見を得て、9月に所蔵館の協力のもとボストンで作品調査を行った。これを踏まえ、学会での口頭発表を行い、またその内容に基づき執筆した論文が2024年度内に刊行される予定である。《バッコスの誕生》は、幼少期のバッコスが養育のためにニュサのニンフに預けられる場面を描いているが、その傍にこの物語には登場しないナルキッソスとエコーの姿が表されており、この図像の特異性について長年議論が絶えなかった。口頭発表と論文においては、この特異な図像が生まれた要因として、ギリシアのボイオティア地方の歴史を叙述することにプッサンの関心があったことを論じた。バッコスの幼年時代もナルキッソスとエコーの物語もこのボイオティア地方を舞台としており、プッサンは場所という共通点を拠り所に複数の物語を並列して表すことでこの地方の歴史を視覚化した。他にも画家の文学典拠の問題や寓意解釈についても新たな観点から論じることができたが、特に「特定の地域の歴史の叙述」という画家の関心を明らかにしたことは、本研究の趣旨に合致する成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より課題として挙げていたテーマのうち、「神話・歴史主題」の作品研究については、《バッコスの誕生》の論考をまとめ、画家の歴史叙述に対する関心を明らかにすることができた。また神話主題の別作品の調査も継続している。他方、近年研究が盛んになっているプッサンの「宗教的要素を持つ作品」の研究に関しては、プッサンが表したモティーフの象徴的意味を捉えるため、図像例の収集と文献の調査を進めている。またプッサンの風景画作品の独創性、またそのイメージの構築過程を明らかにするために調査する「風景画の諸機能の把握とプッサンの位置付け」および「他分野の資料との接点」については、同時代の他の画家による風景画との比較を試み、考古学や地理分野における視覚的資料との関わりについて調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題としている「宗教的要素を持つ作品」、そして「風景画の諸機能の把握とプッサンの位置付け」および「他分野の資料との接点」についての調査を集中的に進める。「宗教的要素を持つ作品」については、教皇庁に属する建築物が描かれている作品が複数認められるため、このモティーフの図像的な役割を考察したい。ただし、作品によってそれらの意味や役割が異なるため慎重に行う必要がある。なお、対象となる作品のいくつかはパリのルーヴル美術館に所蔵されている。「風景画の諸機能の把握とプッサンの位置付け」および「他分野の資料との接点」については、特にパリとローマといったプッサンと共通する環境で制作された風景画作品との比較、そして地図や考古学的な資料のイメージとの接点を調べるために、パリで風景画の作例と同時代に流布していた書物の調査を行う。なお、これらは2023年度の研究計画に含まれていたが、所蔵館のあるボストンをはじめとするアメリカでの調査を優先したために実現できなかった。したがって改めて2024度の目標とする。約2週間を予定しているパリの調査では、これらに加え、17世紀における風景画の需要を考察するため、パリの美術愛好家たちの文化的な背景、趣味や思想についてもフランス国立図書館、古文書館での調査を行う。
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