Project/Area Number |
22KJ2305
|
Project/Area Number (Other) |
22J00976 (2022)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村上 菜菜 岡山大学, 文明動態学研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 日本古代史 / 村落社会 / 村落史 / 地域社会 / 新羅村落文書 / 地方行政 / 古代荘園 |
Outline of Research at the Start |
古代東アジアで「村」の語は広く用いられていた。しかし、国によって地方行政における村の位置は異なる。日本が律令国家として安定を迎えた8世紀、唐令は地方行政の末端単位として郷-里とは別に村を規定し、新羅では州-郡-県-村という体制で地方を統治した。他方の日本令は、末端単位として里のみを制度化した。この相違には、各国の基層社会の特質、人・土地の把握方法の違いが反映していると推測できる。 本研究では、東アジア諸国における地方行政制度の確立過程、郷里といった末端の行政単位と村との関係性を検討しつつ、各国の社会構造や統治組織における村の位置を分析する。その上で、日本の村と地方行政制度の特質を解明したい。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、①日本古代における地方行政単位と村落の関係をフィールドを定めた上で検討しつつ、②朝鮮半島とりわけ新羅の村史料の分析に取り組んだ。以下、成果を記す。 ①の成果は、昨年度に掲載決定済みであった論文「古代東大寺領北陸荘園と『村』」が刊行されたほか、論文「日本古代の国郡行政と村落社会」が『ヒストリア』第301号に掲載された。「日本古代の国郡行政と村落社会」では、石川県津幡町加茂遺跡出土の郡符木簡と奈良県高市郡高取町薩摩遺跡出土の文書木簡を主たる分析対象とし、古代における国郡と村落の関係を検討した。その結果、地方行政の現場において村落の有力者や村落というまとまりを通じて業務を遂行した場合や、溜池築造や農耕祭祀といった村落での再生産過程について具体例を挙げて論じるとともに、村落と郡の密接な関係を明らかにした。これにより、日本の村落の非自立性や流動性を強調しつつ、郡司を中心とする郡こそが古代社会の基礎的な単位であったと説く先行研究を相対化できたであろう。 ②については、新羅の諸史料のなかでも正倉院所蔵「新羅村落文書」が、新羅のみならず日本の古代社会を考える上でも重要な位置を占めることを認識し、本文書を主軸に研究を進めた。韓国における最新の研究成果を参照しつつ、本文書の作成年代や本文書に記された村落の比定地など、分析の基礎となる不可欠な情報を確認する作業に取り組み、韓国・清州での現地調査も実施した。特に、村落の現地比定は重要である。記録された四村のうち一村は、釈読の見直しや後世の史料を根拠に、清州市某所である可能性が高いことが分かった。他の一村も韓国で有益な説が出されたが、確実視するには論証の段階を踏む必要がある。村の比定地が明確になることで、新羅の村落を立体的に把握できるのみならず、本文書の作成目的や新羅の地方統治の特質を追究できる見通しが得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の研究計画に基づき、朝鮮半島の村史料である「新羅村落文書」の分析に踏み込んだ。断片的な史料でありながらも、韓国と日本ともに研究史が重厚であるため、基礎的な情報把握に時間を要している。しかし先行研究では現地に即した分析が不十分であることに気づき、そうした視角から本文書の検討に取り組んだことで、文書に記された村落を立体的に把握できつつあるという成果が得られた。ただし、議論の精緻化には多くの段階を踏む必要があり、成果の公表には至らなかった。 とはいえ、本年度は大阪歴史学会大会で研究発表を行ったほか、日本古代の村落に関する論文を2本公表できたことに鑑み、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「新羅村落文書」の現地比定に基づく分析をより一層深める。同時に、本文書の理解には前段階にあたる六世紀の地方統治と村の関係を把握することが重要となるため、本文書作成の歴史的前提を踏まえた考察が必要となる。これら二点の視角を中心に議論を精緻化させ、学会での口頭報告および論文化を目指す。 また、当初の研究計画では、最終年度に中国の村史料を検討することも含まれている。なぜ唐では村が郷里とは別に規定される必要があったのかという問いを重視しつつ、隋唐の律令制的人民支配の基本構造が北魏の制度に淵源をもつことに鑑み、隋唐・北朝の村を中心的に史料整理を行い研究を推進していく。
|