Project/Area Number |
22KJ2384
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Project/Area Number (Other) |
21J21218 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 38010:Plant nutrition and soil science-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
張 柳 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2021: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 植物機能性成分代謝機構 / 植物生存戦略 / 栄養ストレス応答 |
Outline of Research at the Start |
植物は、硫黄を硫酸イオンとして取り込み、アミノ酸やタンパク質など重要な化合物を生合成している。アブラナ科植物が生合成する含硫代謝物グルコシノレート(GSL)は、病害虫への忌避に働くとともに、発がん予防効果を示す。GSLは硫黄の貯蔵にも働くと考えられてきたが、その分解機構や植物の生長に果たす役割は不明であった。 本研究では硫黄欠乏下(-S)でGSL分解に働くの候補酵素(BGLU28/30)に着目し、「-S下で起こるGSL分解の促進機構と生理的な意義」を調べている。得られた成果は、アブラナ科野菜中のGSL量を調節する技術に応用することができる。食を通した疾病予防への発展が期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
成熟植物におけるBGLU28/30の機能を明らかにするために、本年度は、もう一つのbglu28/30 二重欠損株を作成し、計画通りいくつかの解析を行った。
まず、野生型株(Col-0)と bglu28/30 二重欠損株を異なる 硫黄(S)条件下で生育させ、その生育面の表現型を観察した。その結果は、S欠乏下で成熟したbglu28/30の成長は抑制されたことが観察された。次に、Col-0および bglu28/30 二重欠損株から異なる植物組織(ロゼット葉、茎、花、莢、種子)を採取し、これらの組織中のグルコシノレート、システイン、グルタチオンおよび総S濃度を分析した。その結果、bglu28/30 二重欠損株では、莢、花、種子、およびロゼット葉のGSL蓄積が影響を受けることがわかった。さらに、bglu28/30欠損株の種子では、S欠乏下でシステインおよびグルタチオンレベルが減少した。また、GSL分析の結果は、bglu28/30二重欠損株では、S欠乏下でロゼット葉から生殖器官へのGSL輸送が影響を受けている可能性が示唆された。そのため、ロゼット葉から莢や花へのグルコシノレートの輸送についても検討した。予想通り、欠損によりグルコシノレートの種子への輸送が促進されることが明らかとなった。
上記の結果から、BGLU28/30が成熟植物においてGSL分解に働くことが確認された。そして、この代謝過程は、成熟植物がS欠乏に直面したときに成長を維持するために重要であることがわかった。これらの知見は、これら2つのBGLUの機能をさらに明らかにし、アブラナ科野菜中の機能性成分であるGSLのレベルを調節する技術の開発に貢献するものである。また、今年度にはこれらの成果を国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部実験の順番を変更したが、全体としては研究計画通りに推進している。 予定通り、成熟したbglu28/30二重欠損株の成長と硫黄代謝関連の表現型を、異なるS条件下で観察した。また、これらの二重欠損株についてmRNA-seq解析を行う予定であったが、コロナの影響により、研究協力者所属機関の方針による設備の使用制限のため解析が困難であった。そのため、協力者と再度日程を調整した。また、mRNA-seq解析よりも先にこれらの二重欠損株におけるGSL輸送を解析した。設備の使用制限が解除された後、mRNA-seq解析を予定通り進めることができた。 BGLU28/30の発現パターンを明らかにするために、BGLU28/30の5’上流域に黄色蛍光タンパク質(YFP)を融合させた組換え遺伝子を作製し、アグロバクテリウム法によりシロイヌナズナに形質転換することを予定していた。予定通り、遺伝子組換え植物を取得し、異なるS条件下で育成し、YFPシグナルを観察した。BGLU28/30の細胞内局在を調べるために、BGLU28/30のコード配列とGFPを融合させた組換え遺伝子を作成した。これらの組換え遺伝子をシロイヌナズナの葉由来プロトプラストで一過性に発現させることを試みた。 加えて、異なるS条件下で成長した成熟bglu28/30二重欠損株で観察された成長、代謝、遺伝子発現の表現型を原著論文としてまとめ、投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿した論文については、査読者と編集者からのコメントに従い、追加データの取得と原稿の修正を行っており、再投稿をする予定である。 また、S欠乏下でbglu28/30において促進されたGSL輸送の原因についてさらに調べる予定である。促進されたGSL輸送過程に関与するGSL輸送体を推定するため、異なる硫黄条件下で育成した野生株とbglu28/30の抽台後のロゼット葉での3つのGSL輸送体(GTR1/2/3)の遺伝子発現量を測定した。その結果、-S下のbglu28/30のロゼット葉ではGTR3の発現のみが増加した。bglu28/30におけるGSL輸送の促進へのGTR3の関与を検証するため、bglu28/30へのGTR3欠損の導入を試みている。今後、gtr3/bglu28/30三重欠損株におけるGSL輸送を調べる予定である。 -S下で誘導されるGSL分解では、ニトリル経由の代謝が有利であると考えられる。GSLからニトリルへの代謝が促進されるかどうかを検証するために、NSP5とNIT3欠損株を単離し、異なる硫黄条件下での生育表現型の観察と、グルコシノレート、ニトリル、その他のグルコシノレート分解産物の分析をする予定である。
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