Project/Area Number |
22KJ2469
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Project/Area Number (Other) |
22J21029 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 46010:Neuroscience-general-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中川 拓海 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 大脳皮質発生 / 神経幹細胞 / CRISPR/Cas9 / エピゲノム |
Outline of Research at the Start |
ヒトは、発生段階において、神経幹細胞(hNSC)を、より長い間増殖させることで、他の生物と比較して多くの神経細胞を産生可能にし、その結果として、巨大な脳形成により高度な脳機能を獲得できた。しかし、その分子メカニズムは依然不明である。 本研究では、CRISPR/Cas9システムを用いた網羅的遺伝子スクリーニング法により、ヒト神経幹細胞特有の発生を可能にする遺伝子群を同定する。そして、その遺伝子の機能解析を行うことで、hNSCの神経幹細胞特異的な発生進行を可能にする分子メカニズムの解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に実施した網羅的遺伝子ノックアウト(KO)スクリーニング及びヒトiPS細胞由来神経幹細胞(AF22)を用いた解析によって、遺伝子Xがヒト神経幹細胞の未分化性の維持に関与していることを明らかにした。 遺伝子Xはタンパク質の分解に関わる遺伝子である。そこで、遺伝子Xがどのようにヒト神経幹細胞の長期間のニューロン産生を可能にしているのか、そのメカニズムを明らかにするために、遺伝子Xの発現を減弱させたAF22のプロテオーム解析を行った。その結果、遺伝子Xの発現を減弱させたサンプルで有意に発現量が増加したタンパク質には、細胞周期の停止や分化に関連する遺伝子が含まれている一方、有意に減少したタンパク質には、細胞周期関連遺伝が含まれていた。また、遺伝子X発現減弱サンプルで有意に発現量が増加したタンパク質群のジーンオントロジー解析を行ったところ、ニューロンの分化や成熟に関わるタームが上位に含まれていた。加えて、オートファジー、ミトコンドリアの制御やmTORシグナルの制御に関わるタームも含まれていた。以上の結果から、遺伝子Xはニューロン関連遺伝子だけでなく、複数の細胞内プロセスをも制御して、ヒト神経幹細胞の性質決定に深く関与していると考えられた。 続いて、遺伝子Xの発現減弱により発現量が変化した遺伝子についてネットワーク解析を行い、遺伝子Xの標的因子を探索した。ネットワーク解析の結果、Wntシグナル、mTORシグナル、ミトコンドリア代謝に関わる遺伝子が大きなサブネットワークを形成していた。この結果より、遺伝子Xはこれらのサブネットワークに関わる遺伝子を標的としていると考えられた。 今後は、絞り込んだ遺伝子の中から遺伝子Xの標的を同定する予定である。また遺伝子Xの発現を減弱させたiPS細胞を用いてオルガノイドを作製し、大脳皮質の発生進行が促進されるのかどうかも調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、令和5年度は、①遺伝子Xを電気穿孔法にてマウス胎生期神経幹細胞に過剰発現させ、マウス神経幹細胞の増殖及びニューロン産生量が増加するのかを調べることや、②同定遺伝子が神経幹細胞のニューロン分化能に与える影響の検討、及びそのメカニズムの解明を予定していた。 ①については、ニューロン産生がピークを迎える胎生(E)13日のマウス大脳皮質由来神経幹細胞に遺伝子Xを過剰発現させ、胎生期マウス神経幹細胞の増殖量を評価した。しかし、過剰発現群において有意な差はみられなかった。この結果から、遺伝子Xはニューロン産生ピーク時の神経前駆細胞の増殖には影響を与えず、より早期でニューロンが産生され始める時期のマウス神経幹細胞の増殖に影響を与えると考えられた。今年度は、より早期のマウス神経幹細胞に遺伝子Xを過剰発現させ、増殖能を増加させるのか調べる予定である。 ②については、遺伝子Xがタンパク質の分解に関わる遺伝子であったことから、トランスクリプトーム解析ではなくプロテオーム解析を行ったことで、遺伝子Xがニューロン分化を抑制していることや、複数の細胞プロセスを制御していることを明らかにできた。また、解析の際にSTRINGデータベースを用いたネットワーク解析を行った結果、WntやmTORシグナル及びミトコンドリア代謝を制御していると考えられた。しかし、メカニズムの解明には至っておらず、本研究計画の進捗としては、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①レンチウイルスベクターを用いて、遺伝子XをE11マウス神経前駆細胞に過剰発現させ、増殖及びニューロン産生量が増加するのかを免疫染色により調べる。 ②プロテオーム解析の結果絞り込んだ標的遺伝子をAF22において過剰発現させ、ニューロン分化が促進されるかどうかを検討する。また、ニューロン分化が促進された候補遺伝子については、遺伝子Xと同時にAF22において発現を減弱させ、遺伝子Xの発現減弱によるニューロン分化促進効果が抑制されるかどうかを調べることで、遺伝子Xと各遺伝子のシグナル伝達における上下関係を明らかにする。加えて、遺伝子X発現減弱AF22のRNA-seq解析データとプロテオーム解析データを統合し、特に遺伝子・タンパク質でオーバーラップして発現が増減する因子に着目し、遺伝子Xによるヒト神経幹細胞の増殖を維持する詳細なメカニズムを明らかにする。 ③GFPで標識した遺伝子X発現減弱ヒトiPS細胞を用いて大脳皮質オルガノイドを作製し、ニューロン産生が開始される培養6週間後に、神経幹細胞あるいはニューロンのどちらの細胞集団にGFP陽性細胞が多く含有されるのかを検討し、遺伝子Xの発現減弱によってヒト胎生期大脳皮質においてもニューロン分化が促進されることを確認する。
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