自己組織化ペプチドの分子設計に基づくエマルション型デザイナーワクチンの創製
Project/Area Number |
22KJ2482
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Project/Area Number (Other) |
22J21393 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 27040:Biofunction and bioprocess engineering-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 亜也斗 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 両親媒性ペプチド / エマルション / 自己組織化 / ワクチン / 酵素反応 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、酵素反応により抗原を直接担持可能な両親媒性ペプチド (PA) 構造体を用いることで、安定性・生体適合性・抗原担持能という高いワクチン効果を示すために重要な特性を併せ持つ O/W 型ペプチドエマルションワクチンの創製を目的とする。初めに、エマルションを安定化する PA 分子を効率的に見出すために計算化学と機械学習を活用する。次に見出した PA に対して酵素反応を用いることで抗原の高次構造や機能を維持したままエマルションに担持し、PA 構造体の高いデザイン性を利用して抗原担持量の自在制御を目指す。最後に本ペプチドエマルションを用いたワクチン効果の検証を行うことで本製剤の有用性を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、酵素反応により抗原タンパク質を直接担持可能な両親媒性ペプチド(PA)集合体を用いることで、安定性・生体適合性・抗原担持能という高いワクチン効果を示すために重要な特性を併せ持つOil-in-Water(O/W)型ペプチドエマルションワクチンの創製を目的としている。昨年度までに、N末端に疎水性置換基を導入したPAの N末端アミノ酸を20種類のアミノ酸残基で置換したPAを合成し、これらを界面安定化剤として用いることでO/W 型ペプチドエマルションの形成が可能であることを確認した。本年度は、これらのPAの中で親・疎水性や荷電性などの特徴的な側鎖を持つ5種類のPAを用いて、まず、高い界面安定性・抗原担持能を示すPAの特性の探索を行った。また、本ワクチンを作製するにあたり PA集合体の形態を制御する戦略が鍵となるため、集合体の形態を決定する因子を解明し形態制御に繋げることは極めて重要である。そこで、半年間の海外渡航でPA集合体の集合形成カイネティクスに関する検討を行った。得られた主な成果を以下に示す。
1. 5種類のPAを用いて、透過型電子顕微鏡による集合体の形態評価、濁度測定によるエマルションの安定性評価、高速液体クロマトグラフィーによる抗原タンパク質の導入率評価を行った。モデル抗原として蛍光タンパク質を用いた。その結果、N末端アミノ酸側鎖の性質の違いが集合体の形態、酵素反応性やエマルションの安定性に影響を与えることが確認された。 2. N末端の疎水性アミノ酸の異なる2種類のPA集合形成カイネティクスを評価した。様々な溶媒、濃度領域での時間依存性円偏光二色性分光測定により、アミノ酸一残基の違いで集合メカニズムや集合形態の濃度依存性が異なることが示唆された。 以上の研究成果について、国内学会4件の研究発表を行った。また、筆頭著者として論文執筆を行っており、近く投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度までに、N末端に疎水性置換基を導入したペプチドのN末端アミノ酸を20種類のアミノ酸残基で置換したPAを合成し、N末端アミノ酸一残基の違いでエマルション安定化能や製剤中の局在性が変化することを明らかとした。また、2023年度実施予定であった PA集合体へのタンパク質抗原の集積と免疫細胞へのタンパク質抗原導入の評価を既に行っており、本O/W型ペプチドエマルション製剤の有用性を確認した。2023年度は、2022年度までの知見をもとにして、これまでに合成したPAの中から N末端に疎水性置換基を導入したペプチドのN末端アミノ酸を側鎖の性質が異なるアミノ酸残基で置換した5種類のPAを用いて、本O/W型ペプチドエマルション製剤に必要な要素である高いエマルションの界面安定性と抗原担持能を有するPAの探索を行った。具体的に、本O/W型ペプチドエマルションに必要な要素である高い界面安定性・抗原担持能を示すPAの特性の探索、PA集合体への蛍光タンパク質の導入率評価を実施し、アミノ酸1残基の違いが集合体の形態、O/W型エマルションの安定性や酵素反応性に大きく影響を与えることを明らかとした。また、機械学習を活用したO/W型エマルションを安定化するPAの分子設計の探索に向けて、疎水性置換基の異なるPAも合成し、学習用データとして必要なエマルションの安定性、酵素反応性や自己組織化能の基礎評価を既に完了している。さらに、本研究の重要な課題であるPA集合体の形態制御のために集合体の形態を決定する因子の解明を目指し、海外渡航で酵素反応性PA集合体の集合形成のカイネティクス評価を実施することでPA集合体の集合メカニズムを明らかにすることに成功した。以上のことから、おおむね順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、高い抗原担持能を有するPAを見出すことに成功し、これを用いて作製したO/W型エマルション界面にPAおよびモデル抗原タンパク質が局在することを確認している。また、免疫細胞へのタンパク質抗原導入の評価により、本O/W型ペプチドエマルション製剤の有用性を明らかとした。そこで、今後は、今年度までに得られた高いエマルション安定性・抗原担持能を兼ね備える PA集合体を用いたO/W型ペプチドエマルションを調製し、マウスを用いた動物実験により抗原特異的な抗体産生量を指標にワクチン効果の検証を行う。動物実験で期待したワクチン効果が得られた場合は、抗体のサブクラス解析、活性化した免疫系細胞の解析によるメカニズムの解明、体内動態評価による抗原送達能の評価を行う。並行して、実在抗原を用いたワクチン効果の検証を行う。期待したワクチン効果が得られない場合は、PA分子設計の見直しを行う。 また、これまでに基礎評価を進めてきたN末端に疎水性置換基を導入したペプチドのN末端アミノ酸を20種類のアミノ酸残基で置換したPAと疎水性置換基の異なるPA分子に関して、PAの分子設計と自己組織化能、エマルションの界面安定化能を学習用データとし、計算化学と機械学習を活用することで本研究推進のためのPAの候補を見出す。見出されたPAの候補をクラスタリングによりグループ分けを行い、各グループのPAを数種類ずつ合成し、自己組織化能・界面安定化能のそれぞれを評価することで機械学習の精度を確認する。精度が低い場合は学習用データを追加することで精度の向上を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)