超高速オンチップ流体制御技術を基盤としたハイスループット微粒子操作技術の創生
Project/Area Number |
22KJ2490
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Project/Area Number (Other) |
22J23814 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 20020:Robotics and intelligent system-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋藤 真 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2023: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2022: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | フローサイトメトリー / マイクロ流体チップ / 流体制御 / 渦 / マイクロナノテクノロジー / マイクロ・ナノデバイス / 細胞操作 |
Outline of Research at the Start |
細胞ソーティングは,ある集団中から特定の指標に基づきある細胞を分取する技術であり,生物学や医学のみならず,農学や考古学等の幅広い学術領域に貢献している.近年,その分取速度は毎秒数万個となっており,高速なソーティングが実現されている一方で,システム全体のスループットが,流入する細胞の空間的・時間的な間隔がランダムであることに律速され,高い分取性能を最大限利用することが困難であるといった問題がある.そこで本研究では,マイクロ流体チップを用いた超高速流体制御に基づく濃縮,スペーシング,希釈による高速な粒子操作によって,ランダムな粒子間隔を統制し,より高速なソーティング技術を創生する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,マイクロ流体システムの構築,粒子間隔統制の実験,粒子分取技術の評価を実施した.実験の結果,粒子間隔統制および分取技術のシステムスループットがそれぞれ1.9,3.6 kHz相当であることを確認した.本年度の研究成果を下記3項目に分けて報告する. 1. マイクロ流体システムの構築:昨年度構築した流体システムにおいて,局所的の流体操作と広範囲な粒子間隔の変化を同時に観察するべく,マイクロ流体チップの両面から低倍率・高倍率の視野域での観察を可能とする同軸観察系の構築を行った.さらに,シクロオレフィンポリマーやポリイミドを基板材料とした高剛性樹脂材マイクロ流体チップの試作を行い,より短期間で実験サイクルを回すことが可能なデバイス作製プロセスの確立をした. 2. 粒子間隔統制の実験:昨年度実証した粒子間隔統制操作における制御パラメータの理解を深化させるべく,実験を行った.実験の結果,ピエゾアクチュエータの駆動電圧と時間を制御することにより,流れ場を乱さずに粒子間隔を広げることが可能な,マイクロ渦生成の好適な条件を明らかにした.さらに,この条件下において粒子間隔統制操作の評価をしたところ,0.26 ms以内の短い時間スケールで粒子間隔を広げる操作が可能であることを確認した.さらには,項目1で作製したシステムを用いて粒子軌道の追跡を行い,周期的な渦生成によって粒子の停止・搬送がなされていることを数値的に確認し,コンセプトを実証した. 3. 高速粒子分取技術の評価:項目1で確立した樹脂材マイクロ流体チップによる分取実験を行った.粒子懸濁液を流路中に導入し流れ場を可視化することで,分取操作の応答速度を計測したところ,作製したシステムが3.6 kHz相当のスループットをシステムが有していることが確認できた.さらには,流路中央に励起光を導入し,流入した蛍光粒子を検出・分取することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,大型粒子の高速な分取技術の確立をするべく,ハイスループットな粒子間隔統制技術の創出に取り組んでいる.基盤技術となるオンチップ流体制御技術の基礎評価を進め,当年度計画していた,画像処理による粒子間隔変化の計測を行い,マイクロ渦の周期的生成が粒子の停止・搬送を促し,その間隔統制に寄与していることを数値的に実証した.さらに,前年度から前倒しで進めている,スループットの評価においては,粒子間隔統制操作の応答速度から構築したシステムが1.9 kHzのスループットを有していることを確認した.これに加えて,最終年度に予定していた分取システムとの統合に向けて,システムの構築と基礎評価に取り組んだ.励起光をマイクロ流体デバイスに導入し,ターゲットの蛍光をPMTにより検出する光学系,検出した蛍光強度に基づき分取操作を行う電気系を構築した.また,ピエゾアクチュエータを駆動源とするオンチップ流体制御技術用いて粒子分取を行うマイクロ流体デバイスをシステム中に組み込み,評価をしたところ,137 usの応答速度で分取操作が可能であり,3.6kHz相当のスループットを有していることを確認した.さらに,蛍光粒子を流路内部に導入し,その蛍光を検出し,分取することで構築したシステムにおいて蛍光活性型の粒子分取が可能であることを実証した.これら計画していた研究項目に加え,シクロオレフィンポリマーやポリイミドといった高剛性樹脂材料を基盤とするデバイス作製技術を確立し,デバイス作製サイクルの短縮化を図った.当該研究の論文執筆および学会発表も積極的に行っており,現在論文を投稿中であり,また,国際学会への投稿,国内学会での受賞などの業績も残している.以上より,本年度の設定目標を超えた研究成果を挙げており,現在の進捗状況は当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の前半では,粒子間隔統制技術と分取技術を1つのマイクロ流体デバイスに統合し,その評価を進める.まず,統合による流路デザインの変更の影響を検証するべく,前年度と同様に統合後の流体デバイスにおいて,フォーカシング,濃縮,スペーシング,希釈の流体制御要素それぞれの基礎評価を行う.続いて,本研究のターゲットとしている細胞凝集体や花粉の化石を模した粒径100から160 umのマイクロビーズを流路中に導入し,その時間間隔の変化を画像解析によって計測し,統合後の粒子間隔統制の検証を行う.その後,同サンプルに蛍光粒子を混合し,蛍光活性型の粒子分取に取り組みそのスループットや成功率を評価する.そして,粒子間隔統制と粒子分取を連続的に行い,ハイスループットな粒子分取技術に挑戦する.3年目の後半では,実際に花粉の化石のハイスループットな分取に取り組む.まず,花粉の化石が含む蛍光物質であるSporopolleninを高感度に検出可能な光学システムを構築する.続いて,花粉の化石においても粒子間隔統制が可能なことを示すべく,粒子間隔の時間変化を同様にして計測した後,分取実験を行い,スループットの評価に取り組む.その後,湖底の地層から得られた堆積物のサンプルから不純物を取り除き花粉の化石のみを分取することに挑戦する.本実験にて得られるサンプルの解析を放射性炭素年代測定が可能な外部研究機関に依頼し,年代測定に取り組む.これにより,これまで地層の状態の悪さから測定が困難であった湖のサンプルを用いた年代測定を可能にし,植生や気候に関する新たな知見の獲得を目指すことで,本手法の有効性を示す.ここまでの内容で,国内学会2件以上,国際学会1件以上,論文1編以上の成果を目標とする.
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)