Project/Area Number |
22KJ2550
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Project/Area Number (Other) |
22J01527 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
伊藤 謙佑 (2023) 東京都立大学, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Research Fellow |
伊藤 謙佑 (2022) 東京都立大学, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | truth / language / meaning / intention / mind / concept / unicept / Kante / Kant |
Outline of Research at the Start |
本研究は、言語でのみ表現可能な情報、すなわち、真であるとか、偽であるとか評価できる情報に注目する。この種の情報には、まだ十分に概念的分析が与えられていない。どうやら、言語記号が何を意味するのかだけでなく、それをわたしたちがどのように用いているのかに関する知見がおおいに必要になる。そしてその視点は、発達・比較心理学と、問題意識としては、地続きであるように思われる。そうした領域を行き来しながら、言語伝達の仕組みを考えることで、なぜ嘘をついてはいけないのかとか、合意形成のモデルとか、他の動物の意思疎通との連続性・非連続性とかを、考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
まず、発表の決定した論文について報告する。狼少年の物語が教えるように、わたしたちは言語によるコミュニケーションのなかで。虚偽を避けながら真理を目指している。しかし、この真理志向性は、言語哲学の伝統に反して、概念的に必然的な、そうだとしか考えられない事柄ではなく、経験的な事柄である。それを明らかにするために、当論文では、グライスの枠組みを応用して、虚偽志向のコミュニケーションの可能性を主張した。さらに、この結果を基に、真理の実質主義(substantivism)とデフレ主義(deflationism)との論争を、部分的ではあるが調停した。最後に、「立言」”assertion”は「否言」”denial”と概念的には等価であるが経験的には優先的であるという結論によって、古代ギリシア以来の、肯定的な事柄(やその判断)と否定的な事柄(判断)の概念的優劣の有無という問題に終止符を打った。 つぎに執筆中の論文では、意図(intention)の問題に取り組む。哲学史は、存在、認識、言語と展開してきた。言語は、心と心を繋ぐ架け橋となる道具である、という立場から、哲学のつぎの課題のひとつは、心(mind)だと推測する。主観的な心を、客観的な概念や言語で表現するとき、その齟齬として生じているのが内包性であり、内包的情報のア・ポステリオリな概念的記述を意図、そして意図の内面化、再主観化を意志(will)、とする。たとえば取調べで自白を強要してはならないように、誰にもプライバシーと黙秘権がある。しかしながら、ある殺人事件を社会的に評価するさいに、たとえば事件当日の凶器購入をもとに、殺意を帰属することもある。それゆえ、たとえば容疑者の、意図が正しく記述できているか、つまり内包性は倫理的な問題であり、しかも、記述のもたらす結果によってではなく、カント的に、つまり、普遍化可能性に基づいて評価すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、初年度に設定した課題のうち、解決、達成したものを一本の論文にして、国際雑誌で掲載することが決まった。上述のように、当論文では、分析・言語哲学の伝統の誤りを正し、現在の真理論でもっとも溝の深い論争の調停を試み、さらに、古代哲学から続く難問にに言語哲学の観点から解答を与えた。 つぎに、それ以降に見えてきた課題への取り組みから、新たな問題やそれへの対処案、これからの議論のひとつの進め方など、さまざまな哲学的発見があった。たとえば、フレーゲ的概念とミリカン的統念の両方を認める立場を採ると、ゲティアの問題を解消できる見込みがある。他にも、タルスキの真理論に対するデイヴィドソンの応用にヒントを得て、グライスの、意図を前提にして意味を考察する、という説明連関を逆転させて、意味を前提にして意図を説明することで、意図の問題に取り組むためのひとつのモデルを提示できる。 しかし、こうしたさまざまな発見によって、当初予定していた概念的なモデルを作り変える必要が生じているので、発達・比較心理学の諸成果に基づいて言語的コミュニケーションの個体発生的および系統発生的起源を考察する方向へ研究を広げることができなかった。これを主な理由として、最高評価は避けた。
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Strategy for Future Research Activity |
それゆえ、特別研究員としての最終年度で、まず、新たな発見に基づいて、意図を哲学的に取り扱うための標準となるような新しい概念的モデルを構想し、その上で、そうした哲学的な枠組みと、言語獲得についての発達心理学と比較心理学における研究成果との接続を積極的に提案していきたい。 第一に、新しい概念的モデル、説明の枠組みとして、実践三段論法を省略三段論法として活用する、というアイデアがある。このアイデアを、デイヴィドソンの「賛成的態度」、アンスコムの『意図』における意図と質問の関係、ミリカンの「オシツオサレツ表象」など、意図を認める立場も認めない立場も批判的に踏まえながら展開する。それによって、これまで指摘されてこなかった、意図の間主観性、ア・ポステリオリ性、内包的文脈の評価基準の提案などを新しい見方として提示したい。 第二は、発達・比較心理学、特にだいたい最近5年間の、言語の獲得や起源についての実験結果をサーヴェイし、同時に、哲学と心理学の学術用語の関係を考えて、学際的な交通整理を進める。同じような関心を持っている都立大学の研究者や、ミリカンやバーオンのいる自身の出身校であるコネチカット大学の研究者たちに協力を仰ぎながら、国内外に目を向けて、心や意図の問題について哲学史的に新しい見解を打ち出すことを目論む。
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