Project/Area Number |
22KJ2657
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Project/Area Number (Other) |
21J00052 (2021-2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2021-2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
相樂 悠太 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | スーフィズム / 中世イスラーム思想 / イブン・アラビー / 存在一性論 / 神秘主義 / 哲学 |
Outline of Research at the Start |
スーフィズムの歴史上最大の思想家であるイブン・アラビー(1240年没)とその思想的後継者たちの思想を比較検討し、相互の関係性を考察することで、イブン・アラビーの思想が後世の継承過程の中でいかに変容していったかを明らかにする。そのために、存在論、人間論、霊魂論、修行論といったスーフィズムの中心的主題がイブン・アラビー、その弟子クーナウィー(1274年没)、その影響下にあるカーシャーニー(1329年没)やカイサリー(1350年没)らの主要著作でいかに論じられるかを分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイスラーム思想史上の一大潮流である「存在一性論学派」の思想を対象とした。これまで十分に解明されてこなかった、学祖イブン・アラビー(1240年没)とその思想的継承者たちの理論的差異にとくに注目しつつ分析を行った。2021年度に引き続き、イブン・アラビーの晩年の著作『叡智の台座』への注釈書にみられる彼の弟子筋の思想家たちによる彼の思想の解釈と、主著『マッカ開扉』などにみられるイブン・アラビー本人の思想を比較し、その異同を検討する手法を用いた。 2022年度の研究では、同「学派」のあいだでとくに重んじられた、存在論を焦点とし、テクストの精査に基づき以下の点を明らかにした。『叡智の台座』第2章や第9章では、多彩な比喩表現や預言者の物語の解釈に基づき神の無限の存在の流出による現象界の生成が語られるが、そのさいアーヤーン・サービタ(不変的諸実体)なる難解な鍵概念が提示される。ジャンディー(1291年頃没)、カーシャーニー(1329年没)、カイサリー(1350年没)による、初期の同「学派」を代表する三つの注釈書でこの概念は詳細に解説され、神の存在を限定化する原理として存在界の階層構造のうちに位置づけられる。これに対しイブン・アラビーは『マッカ開扉』において、高度の境地に達した神秘家の内面的状況を叙述するためにこの概念を用いており、そこでは注釈書では捨象される傾向にあるこの概念の認識論的含意が活かされている。この発見は、学祖の多面的な思想が後世に精緻化される過程でいかなる改変を加えられ、変貌していったかを明らかにすることにつながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度にその有用性が確認された、『叡智の台座』とその注釈書の比較検討という手法による調査を2022年度はさらに推し進め、調査範囲を拡大することで、2021年度にまして研究テーマにとって重大な発見を得ることができた。またその成果の一部を学術大会での口頭発表として報告した。参照資料や購入物品、出張に関する計画には一部変更があり、また研究発表の機会はさらに増やすことが望ましいが、研究目的の達成のために現状支障はなく、全体として計画は順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
『叡智の台座』とその注釈書については、調査範囲を拡大したとはいえ、いまだ十分な検討が済んでいない箇所も残っているため、調査を継続するべきであると考える。他方で、イブン・アラビーとその弟子筋の思想家たちの理論上の相違については、すでにある程度明らかにすることができたため、今後はこれらの相違をもたらした彼らの思想的背景を探ることも重要となる。2023年度はこれまで得られた知見に基づき、彼らの主要著作を個別に調査することの比重を増やしたい。 また、これまで注目してきたイブン・アラビー思想の解釈者たちが、みなイブン・アラビーの弟子のなかで後世への影響力が最も強かったクーナウィー(1274年没)の影響化にあることから、これまでの分析結果が「存在一性論学派」内の主流のみに依拠し、偏っている可能性が浮かび上がってきた。これを改善するため、クーナウィー以外のイブン・アラビーの直弟子たちの著作を調査し、彼らが師の思想をいかに受容したかを検討するとともに、クーナウィー系統の思想傾向と比較することも2023年度の課題である。 2022年度までの研究成果のうち、いまだ公表に至っていないものもあるため、これらを2023年度の研究成果とあわせて公表することも2023年度の課題となる。
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