Project/Area Number |
22KJ2911
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Project/Area Number (Other) |
22J01209 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 康太郎 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 映画興行 / サイレント映画 / 札幌 / 日本映画史 / 北海道 / 日本映画 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、戦前から札幌で半世紀以上映画館を経営した九島興行の内部資料(早稲田大学演劇博物館蔵)を分析することにより、サイレント期の地方都市における映画館興行と東日本における映画配給構造の形成過程を明らかにするものである。九島資料は1910年頃から1932年までの映画興行主の書簡や映画配給会社の契約書などにより構成され、地方都市における映画興行の実態やそれを支えた広域的な映画配給構造の成立・変容過程を捉えるうえで格好の資料と位置づけられる。札幌の映画館の経営資料という微視的な事例研究を通して、それをとりまく映画興行と映画配給の大きな動態を明らかにすることを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、札幌で映画興行を行った九島興行の経営資料(早稲田大学演劇博物館所蔵、以下「九島資料」)の調査・分析を中心として、サイレント期の地方都市における映画館興行と東日本における映画配給構造の形成過程を明らかにする試みである。2023年度は九島資料全体像の把握を進めるとともに、視野を広げながら主に5つの研究を行った。 ①前年度につづき札幌の九島興行の谷井平蔵の書簡(1919年)および東京の映画フィルムの輸入・貸付会社カノーフィルムの藤岡大亮の書簡(1919年)の翻刻・読解を進めた。同じ時期の書簡を複合的に、かつ通時的に考察することで映画配給制度の周辺にある映画フィルムの購入環境を検証した。本年度はとくに義太夫映画の手配や弁士の手配に関する資料を考察した。 ②九島興行の映画館で上映されていた琵琶映画に光を当てることで、東京の映画興行と地方都市の興行の連関に注目して考察した。この研究成果の一部は、2023年12月に早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点の共同研究との共催によるシンポジウムと映画上映「甦る、琵琶映画の響き」で発表した。この上映会では受入研究者である小松弘教授所蔵の映画琵琶台本をもとにしたサイレント映画『日蓮上人 龍ノ口法難』の琵琶入り上映を実施し、琵琶歌入りの映画上映の実態を実践的に検証した。 ③札幌の映画興行にさまざまな影響を与えた戦前日本の映画興行をいろどる音文化に光をあてた研究書『映画館に鳴り響いた音』(春秋社、2024年3月)を上梓し、北海道映画史にも大きな影響を与えた東京の映画史と対比的に研究を進める基礎を強化した。④東京の映画館の事例を中心としたサイレント映画の音楽演出をめぐる英語論文を執筆し、活動写真弁士をめぐる論集・図録に寄稿した。⑤北海道での巡回興行のための関連調査としてアメリカ西海岸にまで日本映画が輸出されていた巡回興行の調査を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
九島資料の書簡のうち、藤岡大亮書簡の翻刻に目途をつけ、谷井平蔵書簡の調査を進めた。2023年度の書簡の分析にかんしては東京に出張して行なわれた義太夫映画の手配をめぐる調査に専念し、映画フィルムの購入がかなり限定的な機会に行なわれたという仮説を得ることができた。これについては九島伊太郎などさらにくずし字の難易度の高い書簡の調査と合わせて考察を進める必要がある。なお、札幌の映画興行を支えた東京の映画興行に関する単著を刊行し、今後さらに地方映画興行をめぐる考察を進めるための基礎固めをすることができた。ただし、書簡のくずし字の翻刻が想定以上に難しく、予定していた地方都市を起点とした巡回興行に関する書簡の読解には至らなかった。そこで2023年度には、北海道での巡回興行について関連調査として、アメリカ西海岸における日本映画の巡回興行を考察した。国内に止まらない「日本」映画史の広がりを捉え、地方映画史と日本映画の配給構造のあり方を再考する契機を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①今後の研究課題の推進において、最も中心となるのはこれまでに読解した書簡と同時期に他の関係者と交わされた書簡の読解である。とくに2023年度に進めた義太夫映画の購入手配に関連する調査をさらに立体化させることで、考察の深化を図る(ただし研究成果の一部は2024年5月に発表済みである)。②2024年度には九島伊太郎や石川長太郎などの重要な書簡の選定・翻刻を進めながら、地方映画の巡回興行をめぐる事例の検証を進める。③2023年度の研究成果をふまえて日本国外の巡回興行に関する研究発表を行なう(成果の一部は2024年4月に発表した)。③これまでの研究成果を活かして、義太夫映画や琵琶映画に関する実演入りの上映の実現を試みる。④2023年に刊行された前川公美夫『大正期北海道映画史』は本研究にとって枢要な先行研究となるものである。2024年度にはこの精読を図りながら、九島資料を起点にその再考を図る。地方映画史や映画配給をめぐる近年の先行研究を踏まえたうえで、地方映画史をめぐる研究論文を執筆する。
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