Project/Area Number |
22KJ3021
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Project/Area Number (Other) |
22J00494 (2022)
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund (2023) Single-year Grants (2022) |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川口 成人 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 室町時代 / 文芸史料 / 都鄙関係 / 武家文化 / 遠国地域 / 大名 / 大名被官 |
Outline of Research at the Start |
近年、室町時代の京都と地方の関係(以下、都鄙関係)の研究は、室町幕府による支配体制論を中心に飛躍的に進展している。ただし、都鄙関係と密接に関係する文化史研究や、国文学をはじめとする隣接分野の史料・成果が看過されている点に課題を有する。 本研究では、こうした課題の解決のために、和歌・連歌・紀行文・五山文学などの文芸史料を横断的に活用し、都鄙関係の担い手である武家勢力の政治的・文化的動向を明らかにする。具体的には(1)大名配下で活動した大名被官の政治的・文化的動向の考証、(2)地方文芸と京都文芸の関係解明に取り組む。これにより、政治史と文化史の両面を統合した、新たな室町時代都鄙関係論の構築を目指す
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は2022年度の実施状況を踏まえつつ、研究を進めた。具体的には以下の4つにまとめられる。 ①武家文化の観点からみた京都の領主社会(室町領主社会)の実態 2022年度に検討した新出の細川氏の刀剣注文、歌道家冷泉持為の詠草『持為卿詠草』、犬追物などの武芸関係史料、室町物語『筆結の物語』、禅宗史料などを検討し、室町領主社会における文芸・武芸活動と、それらを通じた縦横の関係性の形成を明らかにした。 ②地方の武家拠点における武家文化の展開 地方出身の武家を戯画化して描いた『筆結の物語』における館の記述や、京都から東国への紀行文『麓のちり』により、武家拠点における文化的活動の様相や都鄙の往来を明らかにした。また、近年関心の高まっている在京武家の菩提寺や個別所領について、近世史料に採録された位牌銘の写や金石文史料から新たに検出し、拠点として位置づけた。 ③遠国地域における武家文化を介した都鄙関係の形成 九州と東国という遠国地域を対象にして、武家文化を介した都鄙関係の様相を論じた。九州の島津氏が内訌を終結させた直後、京都の公・武・寺家の貴顕から発句を得て法楽連歌興行を実施したことを明らかにした。また、戦乱の影響を受けて上洛した東国武家が、京都で歌人・連歌師の指導を受けたのちに再び東国に下向し、文化の担い手として活動する循環構造の存在を指摘した。 上記①~③について、日本史研究会中世史部会と受入機関での研究会で数度の準備報告を実施し、2023年10月の日本史研究会大会で発表した。その内容は、2024年2月に論文として掲載された。 ④戦国時代の畿内と九州の交流に関する新史料の検討 2022年度に原本調査を実施した新史料について、窪田頌氏(九州大学)と共著で史料紹介を執筆した。同論文は査読を受け、2024年度に掲載されることが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は日本史研究会大会で報告し、大会論文を発表した。大会報告・論文では、新出史料や従来歴史学で看過されてきた文芸・武芸関係史料を積極的に活用し、議論の材料として用いたことで、個別研究にとどまらない新たな領域の開拓の可能性を示せたと考えている。さらに、新たな史料の検討によって、室町時代の支配体制論では枠外に置かれがちな、九州・東国といった遠国地域を組み込んだ議論を試みた点も重要である。 大会当日は会場・オンライン双方で多数の参加者があった。質疑では政治史や文化史を専門とする多くの研究者から貴重な意見が得られ、議論を深めることができた。関連して、2022年度末の業績検討会、数度にわたる準備会、大会終了後の反省会では、若手研究者を中心にこれまでの研究や大会報告の内容につき、様々な観点から検討を受ける機会を得たことも付記する。 このように、大会報告・論文を通じて、研究計画で掲げていた「文化的側面を組み込んだ室町時代都鄙関係論の構築」に向け、大きく前進できたと考えている。 一方、2022年度に進めていた個別研究については、上記④で述べたとおり、戦国時代の畿内と九州の交流に関する、共著の史料紹介論文の掲載が確定した。ただし、土佐国大忍荘や細川氏の刀剣注文については、それぞれその一部を大会報告・論文の重要な要素として組み込んだものの、個別論文の発表には至らなかった。細川氏の系譜研究も、同様に検討を要する点が残り、発表できなかった。 以上を総合的に勘案して、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は2023年度の実施状況を踏まえ、以下のとおり研究を進める。 (1)前年度までに実施した個別研究の論文発表 上記「研究実績の概要」「現在までの達成度」でも述べたとおり、2023年度は日本史研究会大会報告・論文に集中したことで大きな成果を挙げたと考えるが、個別論文の発表には至っていない。しかし、これまで進めてきた個別研究は、いずれも政治史・文化史双方にまたがる重要な研究と位置付けられる。よって、適宜追加の史料調査を行いつつ、これらの論文執筆を進めていきたい。 (2)自説の点検・再検討 大会報告・論文については、現在室町時代の文化史研究をリードする芳澤元氏により、誌上批判を受けた(同氏「室町文化史の射程を問う―川口成人報告批判―」『日本史研究』740号、2024年4月)。氏の批判は的確で、自説について見直すべき点・修正すべき点も生じている。最終年度にあたり、個別研究・総論の双方で、氏の批判を念頭に置きつつ、自説の理論的な点検・再検討を進めたい。上記(1)の進展具合にもよるが、研究史の総括および自説の位置づけをはかる研究報告の実施も考えている。
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