Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
我々の意思判断には限界があり、短時間で下す判断はいい加減になり、時間が許容される判断は慎重に下すことができる(Speed-Accuracy Tradeoff)。この意思判断の「いい加減さ、慎重さ」は、認知心理学で発展した計算モデルのある一つの変数「判断の閾値」によってうまく説明される。本研究の目的は、この行動から推定される「判断の閾値」の実態を神経科学的に解き明かすことであった。機能的、解部学的な知見より、「判断の閾値」は大脳基底核・抑制出力によって調節されるという作業仮説を提案し、それに基づく実験、解析によって以下の成果を報告した。微小電気刺激による大脳基底核・抑制出力の人工操作は、状況に依存して変化する単純なサッカード眼球運動課題を遂行中のサルに対して、黒質網様部の活動を制御する尾状核に微小電気刺激を与えると、サッカード(特に対側方向)の発現が抑制されることを以前報告した(Watanabe and Munoz 2010)。しかし、課題を遂行していない状態のネコでは、同じ微小電気刺激によって対側へのサッカードが誘発されることが知られている(Kitama et al.1991)。そこで今回、同一個体(サル)の同一の刺激部位において上記2つの実験を行った結果を解析した。これによると、同一刺激部位において、サッカード課題遂行中は側方向へのサッカードの抑制が生じ、課題を行っていない場合は対側方向へのサッカードが誘発された。これより、尾状核・微小電気刺激によって生じる大脳基底核・出力信号、状況依存的に変化することが示された。この結果より、強迫性障害等の治療で試験的導入されている尾状核・脳深部刺激の行動への影響が、日常生活の状況に依存して変化することが示唆された。この成果は2011年の北米神経科学会(ワシントンDC)にて発表した。
All 2012 2011
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