Research Abstract |
○研究目的 全国学力・学習状況調査等において,思考力の育成が課題として挙げられている。それを受けて様々な取組がなされているが明確な糸口が見えているわけではない。一方,通常学級において特別な支援を要する児童生徒は少なからず存在する。このような状況を受け,育てにくいとされる思考力をいかに学習集団全員に育てていくか追究していこうと考えた。 ○研究方法 特別支援教育は個に寄り添う教育である。個のつまずきを解消する有効な手がかりをもっている。しかし,思考力は課題解決に向けて試行錯誤しながら進むものである。乗りこえるべき必要な壁までも取り除いてしまっては,思考力は育たない。 そこで本研究では,自力解決前後の見通しと振り返りの場で,特別支援教育の知見を生かした働きかけを行うようにした。これらの場面で,考え方(考える視点や方法)を意識付ける。見通しの場面で「こんな考え方をしたら解決できそうだ」と意識できた児童は,自力で解決に向かうことができる。また,振り返りの場面で「こんな考え方を使ったから解決できた」という児童は,他の場面で思考力を転移・活用することができる。このように,見通しと振り返りの場面で,特別支援教育の知見を生かした働きかけを行うことで,自力解決の場を保障し,思考力の育成を図ろうと考えたのである。 ○研究成果 特別な支援の必要な子どもの中には,注意が散漫になりがちな子どもがいる。そのような子どもを想定し,考える視点や方法を意識付ける際,雑多な情報を排除するようにした。板書や教具等を生かしながら,思考する対象を簡略化・焦点化したり,考える視点や方法を浮き立たせたりする工夫をしたのである。そうすることでつまずきのある児童は考え方が見つかり,つまずきのない児童にとっても,考え方がよりはっきりと見えるようになり,より明晰な思考活動が促されるようになったのである。
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