Project/Area Number |
23904003
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
史学
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
齋藤 正憲 早稲田大学, 本庄高等学院, 教諭
|
Project Period (FY) |
2011
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
|
Budget Amount *help |
¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2011: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
|
Keywords | 土器づくり民族誌 / ハイブリッドな製作技術 / プレムトリ村 |
Research Abstract |
申請者は、バングラデシュの首都ダッカ北西、チョウハット村において、土器づくり民族誌の調査研究を実施してきた。結果、ロクロ(西アジア)と叩き(東アジア)の両技術を駆使して成形された土器が、昇焔式の構造(西アジア)を呈しながらも、覆い焼き(東アジア)の環境に近い状態で焼成されていることが確認された。つまり、東西アジアの技術が融合する、まさにハイブリッドな製作技術が観察されたのである。土器づくりの観点からは、バングラデシュにおいて東西を分かつ境界線が策定できるのである。 では、この境界線は、どのような空間的な広がりをみせるのか。本年度は、バングラデシュ西方、インドとの国境にほど近いラジシャヒを調査地区に定めた。聞き取りの結果、ラジシャヒのさらに西方、プレムトリ村において、土器づくりが行われていることを分かり、同地にて、民族誌調査を実施した。 プレムトリ村では、チョウハット村と同様の成形技術が観察された。焼成技術に関しては、窯構造に若干の変化がみられ、さらに燃料も異なっていた(チョウハット村では植物性燃料であったのに対し、プレムトリ村では乾燥獣糞)。しかし、昇焔式の原理に基づき、覆い焼きの環境で焼成する技術は両者で共通しており、したがって、プレムトリ村とチョウハット村の土器製作技術は同様のものであったと判断することができた。 プレムトリ村とチョウハット村では、ともにヒンドゥーの職業カースト(クマール)が土器づくりを担っており、ほぼ同様の環境・食文化のもとで、土器が生産される。同じ条件のもとで実施される土器生産が、同様の技術に支えられていることは大いに頷けることである。東西アジアの境界線は、一定の広がりを持ちつつ、策定されるべきことが確認された。今後、ダッカ東方の状況を見定めることで、境域の土器づくりについての理解を深めることとしたい。 なお、プレムトリ村の土器製作従者には、男性の占める割合が高い。離村する男性が増え、土器づくりが空洞化するチョウハット村とは対照的な状況であるといえる。このことは中央経済との距離に相関するものと推測され、より経済的に孤立したプレムトリ村において、より素朴な生産様式が残されていると考えられる。土器づくりの生産様式をめぐる有益なデータが取得されたといえよう。
|