明治政府の神仏分離・神道国教化政策に対する近世的な民間宗教者の反応に関する研究
Project/Area Number |
23904014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
史学
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
中野 洋平 国際日本文化研究センター, 研究部, 技術補佐員
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Project Period (FY) |
2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2011: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
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Keywords | 教派神道 / 神道化 / 職業としての宗教行為 |
Research Abstract |
【本研究の成果】 本研究は、近世的な民間宗教者たちが、明治政府の打ち出した神仏分離・神道国教化を目的とした一連の政策に対して、どのように反応し行動したのか、その具体相を総合的に明らかにすることを目的とした。 まず、近世期の信濃国に展開していた「信濃巫女」を事例に、次いで、常陸国の「えびす」、土佐国の「いざなぎ流太夫」、甲斐国の「獅子舞」という事例を検討した。 結果、明治政府は(1)近世期からの宗教組織の解体。(2)民間宗教者の公的身分の剥奪。(3)口寄せや占いという職業行為の禁止、神事からの排除。という3段階で、彼女らの所属や身分、職業行為を違法化していったことが明らかとなった。 これに対し近世的な民間宗教者たちは、まずは教派神道に属し活動を確保しつつ、職掌を神道化させるという戦略をとっていたことがわかった。しかし、そこから存続できた者は、神社や神道的な祭祀に関係できた者に限られ、それ以外の門付勧進や口寄せを職とした大部分の者たちは、廃業していったことが明らかになった。廃業した彼らは、多くがそれまでの居住地を離れ、多くは町場に移住して異なる職を得ていたことも重ねて判明した。以上についての一部を学会発表にて公表した。 【本研究の意義と重要性】 従来の研究では禁令の公布と、大部分の民間宗教者が従来の職を廃業したという事実から、「近世的な民間宗教者は明治政府により禁止された」という結論を導いていた。しかし本研究では、禁令に対して、教派神道への所属と神道化という、明治政府が推し進めた宗教政策を逆手に取って存続した、したたかな民間宗教者の姿を描くことができた。また「廃業」についても、むしろ政府による禁止以上に、明治以降可能となった住居の移動と転職の自由、それを下支えした地方都市の形成という要素を背景に、彼らが生き延びるために積極的にとった「転職」であったという点を指摘したことに、意義があろう。 近世的な民間宗教者は、ある一定度の賤視を受けた被差別民であった。明治維新と被差別民の研究については、これまで「穢多」「非人」の動向が主な関心事であり、不完全であった。本研究の成果は、従来の成果と合わせることによって、近代の被差別民史を総体的に論じることが可能な重要なものであると考える。
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Research Products
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