Research Abstract |
高等学校入学などの新環境移行は危機であり、すべての生徒を対象とした第一次的心理教育援助(石隈、1998)、すなわち、集団を対象とした予防・開発的な援助が求められる。高等学校においては、対人関係形成のスキルに加えて、問題行動を減らして望ましい生活を送るための非行予防教育やライフスキル教育(例えば、生活習慣、薬物防止、性非行防止)の要素を加えた援助を行うことで、より大きい効果が得られると考えられる。本研究は、学校格差の低位に属する高等学校において、入学早期に予防・開発的なグループアプローチを用いて学校適応を高めるための援助を行い、その効果について検討した。 予防・開発的グループアプローチのプログラムを、構成的グループ・エンカウンター(國分,1984)と非行予防エクササイズ(押切,2001)、グループワーク・トレーニング(日本学校GWT研究会,1989)、ライフスキル・トレーニング(皆川,1999)から構成した。 入学早期の4月上旬に、仲間づくりと非行予防をねらいとした4時間のグループアプローチを、8月に信頼体験と進路選択に関する2泊3口のグループアプローチを実施した。効果測定のために、標準化された心理尺度である「学級集団アセスメント尺度『hyperQ-U』」(図書文化社)をグループワークの前後に実施した。 その結果、グループアプローチの前後で、学校生活満足度、スクールモラール、ソーシャルスキルに統計的に有意な差がみられ、望ましい方向に変容したことが確認された。また、学級担任や授業担当者らから、生徒が落ち着いて授業に取り組み、学級集団の状況がよいことが報告された。これらから、グループアプローチによって学校適応が改善したと判断された。高等学校入学早期に予防・開発的グループアプローチを用いて、集団生活のルールの定着とポジティブな感情交流(リレーション)を形成することが、入学という新環境移行期における援助として適切であると考察された。
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