これまでの研究結果より、森林環境教育における構成主義的な学習指導では、学力を構成する要素として、特に「体験」が重要であることが示唆され、体験を思い起こすことは、生徒がもつ既有の知識を活性化させ、学習効果を高めることが確認された。本年度の研究では、生徒に実際に自校演習林の里山地帯において、森林の環境保全機能を考える「体験」をさせた。そして、その学習指導は、「体験」→「シェアリング」→「分析」→「仮説化」→「チャレンジ・実践」→「体験」の循環型体験学習理論のプロセスに沿った指導方法をとり、その学習効果を検証した。 森林科学科第1学年を対象に、2010年秋に収穫し保存していた、アラカシ、シラカシの2種類の広葉樹の種子を2011年4月26日(火)に播種させた。それらを栽培体験させ、10月21日(金)に自校演習林に植林させた。一連の体験学習は、数名のグループに分け実施した。また、自校演習林広葉樹林ゾーン(里山)において11月25日(金)に、アラカシ、シラカシの堅果を活用し、秋の里山における自然体験と森林レクリエーションを体験させた。同時に、針葉樹林ゾーンと広葉樹林ゾーンを観察させ、樹種の違いと多様性について説明し、観察したことや発見したことを記録させた。平成24年1月20日(金)に発表会を行い、森林の環境保全機能における基本的事項を共有させ、他のグループの観察結果や意見と比較させ共通性と差異性を認識させた。そして、発表会後に行った生徒個々に対する質問紙形式のアンケートと概念地図を検証した。その結果、里山での自然に対する既有体験がある生徒では、体験学習理論の「分析」にあたる具体的な概念が多かった。また、既有体験をもつ生徒では、概念地図による知識構造の拡大が確認された。このことは、これまでの研究結果と同様に、生徒がもつ既有の知識を活性化させた指導が有効であることが示唆された。
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