本研究でおこなった質問紙と面接調査から多様に分化した定時制高校の現在の全体像が以下のようにあきらかになった。 (1)夜間定時制ひところの荒れは収まったものの、フリーターや無業からの脱却についてはモチベーションが低く退学率が高い、その結果、就職率も低い。 (2)昼間定時制(多部制定時制)特色のある高校として制度的に、出欠席の条件が緩和されていたり単位の取得がしやすいような配慮により高校卒業のハードルは低下したが、社会への接続が困難になる状況がある。 また、定時制の地域性もみられ、大都市部の方がフリーターでの就労がより容易なので、未就労の割合が高く、都市部を離れるにしたがって比較的正規労働に就いている者の割合が高くなる傾向がみられた。 生徒の意識はインタビューによれば、将来の展望が希薄で卒業が目標、もしくはとりあえず在学という目的意識をもつ者が多い。しかし、その一方では正規就労したいという漠然とした希望も有しているものの、そのための進路指導にのったり、就職に向けての努力をおこなう意欲については低い傾向にある。 学校は、様々なメニューや機会を用意し、生徒自身がやる気になることを促しているものの、調査では全体的に効果的な方法は存在せず、スケジュール化したキャリア教育と個別的なキャリアカウンセリングを組み合わせることにより進路指導をおこなったおり、労働集約で非効率的なかかわりとなっている。 改善策としては、生徒相互の交流や学習、チュータ制の導入などでお互いが協働して進路を考え自立を目指す仕組みづくりが必要であると考えられる。
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