Research Abstract |
本研究は,高大接続を視野に,高等教育につながる学力を保証する歴史教育と大学入試「世界史」のあり方について研究することを目的とする。これまでの海外比較研究は歴史教科書問題に絡む「内容」分析に留まり,大学入試「世界史」が測定する学力の研究は稀少である。主な分析対象はアメリカCollegeBoard主催のAP(Advanced Placement)試験で,筆者がこれまで研究してきたセンター試験とSATとの三点比較(共に多肢選択法で出題)を試みた。 アメリカ現地調査(2011.7.20~8.2.カリフォルニア州北部)では,AP年次総会(2011.7.20~7.24.サンフランシスコ)とAPセミナー「世界史」(2011.7.24~7.29.スタンフォード大学)を受講し,大学図書館等での検索を含め,AP「世界史」資料やAP用歴史教科書等を収集した。特に,非公開のAP試験の過去問のみならず,2012年度予想問題一式(新規の「選択肢減少5→4」を反映する貴重な資料)が含まれるCollegeBoard.(2011).AP World History Workshop Handbook and Resources 2011-2012.が得られた意義は大きい。帰国後それらを分析して第60回「全国社会科教育学会」全国研究大会(2011.10.8~10.10.広島大学)で研究発表し,かつ『名大教育発達科学研究科紀要』に投稿した(掲載許可を頂いたが,指導教官のご指導で他の学会誌への投稿を準備中。)。そこでは,試験問題分析の指標として,縦軸に「資料活用の技能:資料を基にした設問か,単なる知識・理解の確認か。」,横軸に「知識・理解:5W1Hの個別的・事実的知識の測定か,歴史的解釈を含む高次の知識か。」の軸を設定して,このマトリクスの中に3試験を位置付けた。その結果,「センター試験→SAT→AP」の順に資料を活用した高次の知識をより多く測定していることが確認された。ここには,例えば「産業革命が19世紀初頭から現在にかけて世界のいくつかの地域に及ぼした影響」について深く考察させるような,AP授業が反映されている。 今後この研究成果を元に,高大接続に寄与する学力を保証する歴史教育と大学入試のあり方の提言を目指し,研究を深めていきたい。
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