○研究目的 従来教科書の生態分野で扱ってきた原生的な自然と対極にある都市が、生物に与える影響という視点で都市環境を考えさせる野外実習教材を開発する。この教材により、生態分野の実習が実施し難かった都市域での野外実習を可能にする。 ○研究方法 人工建造物に着生するコケに生息するササラダニ類を研究対象とした。 1.実習教材としての有効性の検証 (1)全国の都市部の建造物上に着生するコケに生息するササラダニ相を把握する。 (2)コケに生息するササラダニ類と環境要因との関連性を調査する。 2.生態学実習教材の開発 (1)コケに生息するササラダニ類のデジタル検索図鑑を作成する。 (2)ササラダニ類を用いた生態学実習書を開発する。 ○研究成果 1.調査した全国17都市の全てで、人工建造物上のコケからササラダニ類を得ることができた。総種数は21種で、ほぼ全国的なササラダニ相が把握できた。特に北海道釧路市で採集したササラダニ類は日本で未記録の「属」と考えられ、調査中である。 2.ササラダニ類を分離する材料である「コケ」は一般に用いられる「土壌」より実験操作上扱い易い。 また、生息するササラダニの種数も限られるため分類し易く、実習教材として優れていることが判った。 3.コケに生息するササラダニ類は季節変動があり、夏の高温期には建造物床面の温度上昇がその生息を限定していることが判った。 4.生徒がササラダニ類の分類を行う際、スケッチと顕微鏡写真を両用することが種の同定作業に効果的であることが判った。
|