Research Abstract |
本研究では、中学校数学の「資料の活用」・領域において,「まんなか」という言葉で表される内容から平均値,最頻値,中央値へと分化していくカリキュラムを開発し,その効果を生徒の学習の様相に基づいて実証することを目的とした. 本研究の目的を達成するために,まんなかからの分化の過程において,代表値の理解の質の向上を意図して活動を位置付けて作成したカリキュラムに基づいて実施した学習の様相を,ビデオ記録,音声記録および学習カードの記録等をもとに,カリキュラムの変更点が及ぼした効果を質的な研究方法で特定し,分析・考察した. その結果,まんなかへのとらえの相違を視点に子どもの追究の様子を分析すると,その過程では,個々の代表値の特性をとらえている姿が見られ,代表値が分化され,資料を解釈するための道具として位置付いていることが明らかになった. また,代表値同士の関係への着目を視点に子どもの追究の様子を分析すると、個々の代表値やヒストグラムの持つ特徴も考慮して,思考する様子が見られ,分化してきた代表値やヒストグラムといった知識が,実際の問題を解決する場面で活用されていることが明らかになった. 以上のことから、カリキュラム開発において以下の2点考慮すべきであることが示唆された. 1.集団の中における位置を考える活動,複数の資料を比較するという活動が,個々の代表値の意味理解を深めるとともに,代表値同士のかかわりについても着目することが可能であり,代表値の分化を支えている. 2.実際の問題を解決するために,代表値や分布を使う場面で,分化してきた代表値がそれぞれの関係を意識されながら統合される場面がある.
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