Research Abstract |
本研究の目的は,小学生を対象とした食教育とESDとのクロス学習をめざす「米粉食パン」の教材の開発である。平成23年度より完全実施となった新学習指導要領では、これまで以上に「食育の推進」や「ESD(持続可能な社会のための教育)」に対する重要な位置づけが行われている。また,我が国の農業政策の方向は,余剰米としての「うるち米」「雑穀米」「米粉」を有効に利用し,食糧自給率や環境保全を高めようとしている。本研究は,そこを切り口にして,「食教育」と「ESD」をクロスさせた学習モデルの授業実践を実証的に検証し,新教材の開発を提案することにある。 研究の方法は,3つのアプローチから行った。1つ目は,「食教育」と「ESD」に関する最新の情報収集を行ったことにある。「米粉」をめぐる最新の状況をもとに,関連するステークホルダーと教材の開発の可能性を探った。2つ目は,小学校6年生29名の児童を対象とし,6月と3月に分けて2回の検証授業を行った。3つ目は,大分県における米粉の増産計画との関係性に焦点を当て,家庭科・理科・社会科・総合的な学習とのクロス学習を考え,実行性の高い内容として再検討した。 研究成果は,大きく3つある。(1)「米粉食パン」を主食とした朝食作りの授業をきっかけに児童の「米粉」に対する興味関心は飛躍的に向上した。授業後の調査から本教材の有効性が明らかになった。(2)食糧自給率や環境保全に関する問題を「米粉」から考える機会を得て,児童は食教育とESDとの関係性に目が向くようになった。本教材は,小学校高学年の学習内容の配列の中においてクロス学習を行うことが研究の成果としてあげられる。(3)民生品の「米粉パンコース」機能付きホームベーカリーは小学校高学年の教材として学習効果が極めて高い。うるち米からパンを焼く「米パンコース」機能付きのライスブレッドクッカーなら、うるち米を粉砕する様子から観察できるので更に有効である。
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