Research Abstract |
【研究目的】CSCLの利用は,学習者に有効なリフレクションや足場がけの機会を提供し,学びを促進させる。本研究で活用する創発的分業支援システム「Kneading Board(通称KB)」は,複数の学習者らが画面共有しながら,協同的に概念地図を作成することを可能としたCSCLである。本研究の目的は小学校理科の実験活動でKBの投票機能を用い、その効果と要因について明らかにすることとした。 【研究方法】公立小学校5学年「電磁石のはたらき」で「投票機能を使用しなかった授業」と「投票機能を使用した授業」の比較分析を行った。調査は(1)授業中,他班の実験結果を見たときの認識,(2)学習後,KBを再生させたときの認識,(3)授業中の話し合いに対する認識について質問紙調査を行った。分析は被験者内一要因分散分析を行った。 【研究成果】明らかになったのは以下の四点である。第一に,他班から自班に投票されることで,自分たちの活動に自信を持つ。これらは,投票数と共に,特定可能な他者が評価をしていることが影響していると考えられる。第二に,他班への投票に関心を持っている,投票結果のすべてが表示されたため,クラス全体がどこを注目しているかが把握でき,焦点化したデータの閲覧が可能となった。第三に,投票機能が実装されたことで,話し合いが活性化し,自班の実験の工夫や改善が促進した。投票機能が以下のリフレクションを促進させたことが要因と考える。(1)他班の実験結果と自班を比べる。(2)自班への投票から自問する。(3)他班に投票する際に自問する。第四に,授業後にKBの画面を再生させることは,投票機能の有無にかかわらず,振り返りを促進させた。しかし,実験結果の入力と投票の時間のずれは,その効果を抑制した可能性がある。
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